ガルマ「グフとか要らないんじゃあないか?」シャア「えっ」
シャア「私もギャンが欲しいなぁ」ガルマ「えっ」
の続きになります
永井一郎「ビグザムの量産化というジオン公国最大の危機を辛くも脱したガルマとその友人達」
永井一郎「ときに宇宙世紀0079、12月が半ばを過ぎた頃であった」
永井一郎「諜報部に悪巧みを持ちかけ、ビグザム開発をビグ・ラングの開発に無理やり転換することに成功したシャア・アズナブルは」
永井一郎「月の要衝グラナダにてオリヴァー・マイと合流」
永井一郎「ララァと共に統合整備計画の経過観察に乗り出すのであった」
ゴォォォォ……
シャア「くっ……!」
ピピッ
シャア「そこだ!!」バァンッ
ビシィッ
『目標に命中』
シャア「次だ!」ガシャコンッ
ピピッ
シャア「ぬぅっ!」バァンッバァンッ
『目標に命中』
ピピッ
シャア「またいやらしいところに出したな……だが!」ドゥンッ
『目標に命中、全行程を終了致します』
ララァ「大佐」スッ
シャア「ありがとう、ララァ」
マイ「シャア大佐、お疲れ様です」
マイ「どうでしたか? 統合整備計画により開発された【ケンプファー】の性能は」
シャア「恐るべき機動力だ。乗っていて恐いと感じたのは、ザクの初搭乗以来だよ」フキフキ
マイ「強襲用に特化した特殊部隊運用前提の突撃機体ですからね」
マイ「機動力はゲルググ以上、ビームライフルこそ持てませんが火力も折り紙付きです」
シャア「気に入った。このまま持ち帰りたいくらいだよ」
バチバチバチ……
マイ「性能面では機動力に特化したことで正面装甲以外は脆弱、全身のバーニアと大量の実弾武装により潜在能力は非常に高いものの扱いは難しいものと思われますが」
シャア「確かに厄介なMSではある。だが当たればおしまいとはいえ、当たらなければどうということもあるまいさ」
マイ「大佐ならば本当にそうでしょうね」
シャア「ガルマは何と?」
マイ「少数生産による特殊任務遂行部隊の運用には賛成だそうです」
マイ「何よりケンプファーは統合整備計画により開発されたこともあり、整備性の向上から分解、組み立てが楽である点が利点に挙げられもします」
シャア「バラしたMSを現地で組み上げる、か?」
マイ「この性能のMSを、です」
シャア「いかにもガルマが喜びそうなMSだな」
マイ「宇宙やコロニーのような場所ならいざ知らず、地球などでは不意な衝突や激突の可能性も挙げられますから……」
シャア「下手にぶつけて腕が動きませんじゃあ、話にもならんからな」
マイ「強襲には夜襲や起伏の激しい地形などを選ばざるを得ない意味合いもありますから、運用には注意を払う必要がありますね」
シャア「武装も悪くないが、ショットガンと言うのは珍しいな」
マイ「強襲用ということもあり、適当に狙いをつけてもダメージを与えられる武装が選択されました」
シャア「弾丸が装甲を貫通するのか?」
マイ「ルナチタニウム合金を使った特殊な弾丸ですから、貫通力は期待できます」
マイ「ポンプアクションはケンプファー自体の機動戦で万が一の不備が起きないようにした保険ですが、もちろん自動排莢も可能ですよ」
ララァ「大佐、MSが沢山あるわ」
シャア「それはそうさ。グラナダだからな」
マイ「到着しました」
シャア「ふぅ……久し振りの宇宙だというのに、妙な疲労感があるな」
マイ「地球の重力に馴れ過ぎましたね、気疲れという奴ですよ」ハハハ
シャア「まあいいさ、さっそく始めよう」ダラー
ララァ「大佐、みっともないです」
マイ「分かりました。こちらをご覧ください」
ララァ(スルーした……!)
ヴンッ
マイ「こちらが統合整備計画におけるMSの改良タイプ……」
マイ「【ザクⅡ改】【リックドムⅡ】【ズゴッグE】【ケンプファー】【ハイゴック】」
マイ「そして【ゲルググJ(イェーガー)】【ギャンK(クリーガー)】となります」
シャア「成る程成る程」フーン
シャア「なに、気にするなララァ」
シャア「ガルマが見ていない間くらいは羽を伸ばしても罰は当たるまい」ハッハッハ
キシリア「私は見ているがな」
シャア「ひゅいっ!?」
マイ「キシリア閣下!」ビシッ
キシリア「マイ技術中尉、ララァ少尉、如何に上官とて怠慢が許される道理はないぞ」
キシリア「彼の者を思うなら苦言を呈することを恐れぬことだ。ことこの男にはな」
ララァ「はい、キシリア様」
マイ「肝に銘じさせていただきます」
シャア(くっ……例のビグ・ラングの一件でキシリアにだけ正体バラしたのがマズかったか)
キシリア「続けろ。私もこの計画には興味がある」
マイ「では、続けさせていただきます」
マイ「こちらの三機に関しては全体的に性能を向上させつつ、各々の問題点を特に改良する方針で進めております」
マイ「ザクⅡ改に関してはバーニアの追加により推力を大幅に向上」
マイ「リックドムⅡに関しては前身の最大の問題点だった稼働時間をプロペラントタンクにより補填」
マイ「ズゴッグEに関しては全体的なパーツの見直しによりコストを大幅に削減、性能向上と合わせ量産体制を完全に確立しました」
マイ「特にリックドムⅡのプロペラントタンクに関しましては、ゲルググJとギャンKにも同様の処置をして稼働時間の確保をし」
マイ「ザクⅡ改にも応用し稼働時間を延ばすようガルマ様から通達を受けております」
キシリア「そんなに深刻なのか、稼働時間は」
マイ「リックドムはドムに比べ稼働時間が四分の一、ザクⅡ改はザクⅡF型と比べ二分の一になっていまして」
マイ「ガルマ様が『四分の一とか急造にも程があんだろうが、パイロットに永遠の宇宙の旅をプレゼントするつもりか』と大激怒されたことで統合整備計画入りが確定した経緯もあってのことです」
シャア「私はそのときとばっちりで10キロの書類の束で殴られたからな」
マイ「性能向上にしか目を向けていなかった開発部の思想や、推進剤が無ければ移動もままならない宇宙の環境によるものが原因と言えるでしょう」
キシリア「成る程……私からもよく行っておこう」
シャア「…………」
ララァ「大佐……」
マイ「続きまして【ハイゴッグ】に関してです」
マイ「何故最初の三機と分けたかと言いますと……」
キシリア「言わなくてもだいたい分かる」
シャア「あぁ」
マイ「そう、ですか?」
ララァ「というより、ゴッグの面影は何処にあるのでしょうか……?」
マイ「そう、ですよねぇ……」
シャア「つまり、なんだ」
シャア「【ゴッグを手直ししたらあまりにも直す場所だらけで全く違うMSになっちゃいました】と」
マイ「違うのですッ!!」ガタッ
シャア「おぅっ!?」
マイ「ゴッグが駄目なMSだったというわけでは無いのです!! ゴッグ自体は優秀なMSだったのです!!」ガシッ
マイ「しかしっ……しかし地上での展開力、ビーム兵器に対する重装甲の無力化、そもそもの機動力など、ズゴッグとの比較でどうしても利点が活かせなくなってしまっただけなのです……!!」ブンブンブン
シャア「わかっ……わかったから……はなせ中尉……オゥェッ」
マイ「はっ……取り乱しました、申し訳ありません」サッ
シャア「っ……!」プルプル
ララァ「大佐……!」
マイ「えー、ハイゴッグはズゴッグEとの連携を重視し、機動力を重点的に高めたMSです」
マイ「ゲルググのビーム兵器の技術を利用し、ズゴッグEと共に腕部ビームカノンを強化、連射可能にしてあります」
マイ「装甲も減らしゴッグほどの耐久性は無くなりましたが、機動力向上とコクピットの改修により扱いやすい機体に仕上がっております」
マイ「オプションをズゴッグEと共用にしたり、腕部にハンドミサイルユニットを装着し水中からの強襲、基地破壊の役割を持たせるなど、運用面でもゴッグ以上の機体に仕上がっていると評価できるのではないでしょうか」
キシリア「かなり特異な見た目だな」
マイ「ははは! ザクレロほどでは……」
シャア「中尉!」
キシリア「…………」プルプルプルプルー
マイ「次、次行きましょうっ!」
・
・
ガルマ「道理で姉上の機嫌が酷かったわけだ……」
シャア『私のせいではないよ、マイ中尉の失言によるものだ』
ガルマ「君がぐうたらしていてろくに話に参加してなかったとも聞いているのだが?」
シャア『そんなことはないさ。やれやれ、キシリア閣下も困ったものだな』フッ
ガルマ「……まあいい」
シャア『そちらはどうだ』
ガルマ「ジャブローは静かなものだよ」
ガルマ「オデッサの敗残兵の掃討とガウによる爆弾投下の牽制は繰り返しているんだが、相変わらず気持ちが悪いくらいに静まり返っている」
シャア『やはり、始まっているのだろうな』
ガルマ「例の量産型MSの本格的な量産がな」
ガルマ「傑作だな。正直ゲルググ以上かもしれん」
シャア『……そこまでか』
ガルマ「ゲルググのコンセプトである【ビーム兵器を搭載した量産MS】をゲルググよりも遥かに安い形で成り立たせているのだ、当然だろう」
ガルマ「基本性能もザクを軽く上回っているからな……心底厄介だ」
シャア『分からんぞ。もしかしたらゲルググ並みの高値なのを無理やり作り出しているのやも』
ガルマ「それはあるまい。連邦軍があの性能のMSに手間取るような愚を犯すとは思えん」
ガルマ「もはやドムやG型ザク(グフ)の装甲の利点は、あのビーム兵器の前では無に等しくなっている」
ガルマ「それに肝心の格闘性能もビームサーベル標準装備と来たものだからな……全く、やってくれるよ」ハァ
シャア『そう悲観することもあるまい、ゲルググの量産と統合整備計画による効率化は順次進められているのだ』
シャア『君がそんな弱気でどうする?部下の生き死には君の手にかかっているんだぞ』
シャア『君の考えていることは分かっている。ビグザムの開発運用を完全に中断したことだろう』
ガルマ「むっ……」
シャア『確かに、もしかすればビグザムでジャブローの基地を無理やり掘り起こせたかも知れない』
シャア『だが浪漫に賭けるには些か博打が過ぎる。それを引きずるなど、君らしくもない悩みだ』
シャア『それにあれは君の統治のやり方に反すると、そう言って作り替えたんだ』
ガルマ「兄上には甘いと叱られたがな」ガタン
シャア『そんな甘ちゃんだからこそ私はついてきたんだ。今更冷酷になられても困る』
ガルマ「そうだな……私は坊やの少将だ」フッ
シャア『頼むぞガルマ、せいぜい私が行くまで耐えてくれ』
ガルマ「ふっ……君が来る頃には全て終わっているかも知れんよ」
シャア『その意気ならば私も楽が出来そうだ。では、また』
ガルマ「地球で会おう、友よ」
ピッ
ガルマ「…………」
イセリナ「ガルマ様?」
ガルマ「イセリナか、どうした」
イセリナ「シャア大佐とお話をしてらしたようなので、お声かけを躊躇っておりました」
ガルマ「シャアは軍人である以上に私の友人だ。気兼ねすることはないよ」
イセリナ「存じておりましたが……」
イセリナ「私にはそれ以上に、ガルマ様が迷ってらっしゃるように感じられましたので……」
ガルマ「……迷い……か」
ガタッ
イセリナ「はい」
ガルマ「この戦争が始まった当初から今までに、人類の総人口がどれほど失われたのか知っているか?」
イセリナ「いいえ……」
ガルマ「初期の一週間戦争の時点で30億人近い人命が失われている」
イセリナ「30……?」
ガルマ「私は若かった」
ガルマ「この重力戦線で司令官に着任したのも、元はといえばザビ家の人間としての使命を果たす為だった」
ガルマ「だが今は、ザビ家の罪を贖うことこそが私の使命だと感じている」
イセリナ「罪、ですか」
ガルマ「30億人の中には、ジオンが自由をもたらすべきスペースノイドがいる」
ガルマ「それも連邦軍ではなく、ジオン公国自らが手を下した数多くのスペースノイドが、だ……!」
ガルマ「それを曲解し、歪曲させ、利用したのは父と兄……そしてそんな口車に易々乗って浮かれたのが私だ」
ガルマ「もっと早く気づかねばならなかったのだ……いや、気づいたからといって止められはせなんだろうが」
ガルマ「咎人というならば……私は生まれた時から咎人なのだ」
ガルマ「罪ならば償おう、この身果てようとも。それが【友】の道となるならば」
イセリナ「ガルマ様……」
ギュッ
ガルマ「イセリナ……」
イセリナ「…………」
ガルマ「私の背負う荷は重い。逃げたくばいつでも逃げろ」
ガルマ「私は責めはしない」
イセリナ「イセリナは、ガルマ様にお逢いしたその日から、ガルマ様と共に朽ちると誓った身」
イセリナ「自ら地獄に堕ちるというならば、どうかこのイセリナも道連れになさって」
ガルマ「イセリナ……」
永井一郎「ガルマの思いを知らぬシャア」
永井一郎「二人の友はそれぞれの想いを吐き出すことなく、今はまだ同じ道を歩んでいた」
永井一郎「ただし、戦いの世に生きる術は想いの強さでも無ければ、正しさでもない」
永井一郎「強さと運、ただそれのみである」
キシリア「…………」チラッ
キシリア「そろそろだな」
シャア「そうですなぁ」ボー
ララァ「大佐、もっとしっかりなさってください」
シャア「いや済まんなララァ、昨日はちと寝付きが悪くて」ゴシゴシ
キシリア「この野郎……樽を赤く塗ってぶち込んで宇宙漂流刑にしてやろうか」
キシリア(赤い彗星は職務に熱心なのだな。感心するよ、シャア)
シャア「えっ」
ララァ「えっ」
キシリア「あっ」
ウィンッ
ジョニー「ジョニー・ライデン少佐、ただいま参りました……」
ジョニー「って……何かありましたか?」
シャア「ジオン十字勲章の受章式以来かな。久しいなジョニー・ライデン少佐」キリッ
ジョニー(うわ、すっげえ白々しい笑顔)
マイ「すみません、遅れました!!」
ジョニー「ん」
マイ「あ」
キシリア「遅かったなマイ中尉。紹介しよう、ジョニー・ライデン少佐だ」
マイ「真紅の稲妻、ジョニー・ライデン少佐でありますか!?」
マイ「オリヴァー・マイ技術中尉であります! 真紅の稲妻に会えるとは、光栄であります!」
ジョニー「はは、どーも」
キシリア「貴公を呼んだのは他でもない。新型機受領と共に重力戦線への加入をしてもらいたいのだ」
ジョニー「宇宙にデカい雛人形が建てられるんで、とうとう私もお払い箱かと戦々恐々しておりましたが」
キシリア「その雛人形を何機並べようと、真紅の稲妻には代われまいよ」
ジョニー「もう一人、でありますか?」
キシリア「貴公もよく知る男だよ。貴公が私からのガルマへの手向けならば、その男はドズル中将からのとなるが」
ララァ「ドズル中将の……」
マイ「まさか……!」
ウィンッ
マツナガ「シン・マツナガ大尉であります。遅れてしまったようで、申し訳ありません」
マイ「【白狼】……シン・マツナガ大尉!!」
ジョニー「ヒュウ、こいつぁすごいな」
シャア「ふふ、まさに機動艦隊に匹敵する手向けでありますな」
キシリア「例のビグ・ラングの投入もあるが、過酷なジャブロー攻略戦を前に何かしてやらねばと思ってな」
キシリア「ライデン少佐、マツナガ大尉。付いて来い。新型をくれてやる」
マツナガ大尉「新型、でありますか?」
ジョニー「待ってました!」
ジョニー「これは……!」
マツナガ「なんと、これほどとは!」
キシリア「……マイ中尉」
マイ「はっ」
マイ「左のゲルググが【陸戦型ゲルググ】のJ(イェーガー)装備タイプ、右のギャンが【ギャンK(クリーガー)】」
マイ「共に統合整備計画による強化改修を施した、エースパイロット専用MSです」
ジョニー「赤いってことは、俺がゲルググを貰って」
マツナガ「私がギャンKを受領するということになりますな」
マイ「はい」
ジョニー「ん、統合整備計画の開発なら、俺はゲルググJじゃなかったのか」
マイ「…………」
シャア「…………」
ジョニー「…………ん?」
シャア「バックパックに至っては重力下使用考えてない構造だからな……ここで【ジョニーはJ!マツナガはK!】とバシッと決められたら格好良かったんだが」
マイ「ガルマ様に『J型を無理やり地上型に改装して利点があるのか、ん?』と笑顔で指摘されましたからね……」
シャア「やばかったなあれは……目だけ全く笑ってなかったものな」
ジョニー「あぁ……そうなのね……ははは」
マツナガ「?」
ララァ「大佐……っ」
マイ「まずゲルググJは、ゲルググを統合整備計画により強化改修し、ザクやドムなどのデータを吟味し取り入れることで射撃に特化させつつ内面の改良を図ったMSです」
マイ「武装も狙撃モードとマシンガンモードを使い分けられる特別な大型ビームマシンガンを装備」
マイ「腕部に内蔵型ビームスポットガン、低出力ながら連射が可能なビームマシンガンを装備し、ビームサーベルも搭載してありました」
マツナガ「成る程、スポットガンは例の腕時計のデータから……ですか」
マイ「はい、射撃特化ではありますが、空間戦闘能力の高さから苦手な距離は無いと断言出来るMSです」
マイ「間違い無く現段階のジオン軍MSにおいては最強のMSと言えるでしょう」
ジョニー「でも俺は使えない、と」
マイ「…………」
シャア「…………」
マイ「陸戦型ゲルググは、ゲルググを防塵改修するなどして陸戦仕様にしたMSです」
マイ「今回はリミッターを完全に外したピーキーなライデン少佐仕様に改造してあり、武装もビームナギナタ、両腕部グレネードガンを標準装備」
マイ「それにイェーガーの大型ビームマシンガンを装備させ、射撃特化にしてあります」
ジョニー「だんだん趣味の領域に走ってきてんな……」
マイ「言わないでください……」
シャア「ちなみにゲルググは統合整備計画で開発されたMMP80マシンガンや、統一規格のジャイアントバズなどの武装全て使う想定がなされている」
ジョニー「成る程、大型ビームマシンガンは持たせてやるが好きに戦えと、そう言うわけですな?」
ジョニー「真紅の稲妻の名、重力戦線にも轟かせてやるといいさ」
マイ「もとよりこのギャンK、白兵戦に長けたエースに配備する少数生産枠のギャンを統合整備計画により強化改修した機体です」
マイ「こちらはゲルググJが射撃特化の機体であるのに対し、とにかく突っ込むのに最適な機体という印象を持っていただければ概ね正しいと思われます」
マイ「安全性と汎用性に問題があったシールドミサイルは廃止し、G型ザク同様シールドと腕の間に武器を置く方式を採用」
マイ「これによりシールドは多少小型化しましたが軽量化とシールドの耐久性向上に成功」
マイ「グレネードガンによる砲撃で中距離までをカバーしつつ、一気に突撃してビームランスで撃破する戦法が有効だと思われます」
シャア「難しい機体だが、大丈夫かな大尉」
マツナガ「わざわざギャンを配備してくださったガルマ様のご好意に報いるためにも、このマツナガ身を粉にして働く所存です」
マイ「いえ、正確には可能なのです。が、中距離程度ならビームランスとグレネードガンで対処出来てしまい、本体のスピードが非常に素晴らしいので、なまじ使うくらいなら、というバランスに仕上がっていると考えてください」
ジョニー「面白そうだな。大尉、今からでも交換するかい?」
マツナガ「いえ、乗りこなして見せますよ。じゃじゃ馬ならばなおさら燃えるのが男というものです」
ジョニー「流石は白狼だな。期待してるぜ」
シャア「意外に仲がいいな」
マイ「まあライデン少佐がザビ家の悪口言ったりしなければ喧嘩とかにはならないのでは?」
シャア「いやに具体的だな」
キシリア「ガルマを助けてやってくれ。あの子はよく成長してくれたが、まだ脆いのだ」
ジョニー「はっ!」
マツナガ「この身に替えましても……!」
シャア「二人とも、私からもよろしく頼む」
マツナガ「は?」
ジョニー「赤い彗星は降りないのですか?」
シャア「私にはここに来た明確な使命があるからな」
シャア「それが終わるまでは帰れんのだよ」
シャア「行くぞララァ」
ララァ「はい、大佐」
マツナガ「使命……?」
ジョニー「何だか怪しいが、詮索は止めておくか……」
――――
にも関わらずまだジャブロー進んでないから、此処からはいわゆる一年戦争末期の機体がガンガン参戦してくる計算になる
マイ「ララァ・スン少尉、準備はよろしいですか?」
ララァ『はい、問題はありません。いつでも行けます』
シャア「では……」
マイ「【ブラウ・ブロ】の評価試験を開始します。始め!」
・
・
・
マイ「試験、終わります。ララァ・スン少尉は帰投してください」
シャア「どうだった、ララァ」
ララァ『あまり苦しさは感じませんでした』
シャア「よく頑張った。戻ってこい」
シャア「……どうかな、中尉」
マイ「言葉に出来ません……恐ろしさすら覚えますよ」
マイ「これがララァ・スン少尉の、まだ戦場すら知らない少女の実力ですか」
マイ「ブラウ・ブロは、60mクラスの巨大MAです」
マイ「サイコ・コミュニケーター搭載型のニュータイプ専用MAの一号機にあたる機体ですが、その能力は非常に高く、かつ無理があります」
シャア「と、いうと?」
マイ「このブラウ・ブロの最大の特徴は、四つの有線メガ粒子砲を分離させ、敵を様々な方向から狙い撃つ【オールレンジ攻撃】にあります」
マイ「メガ粒子砲は本体と直接繋がっているので連射が可能、かつ威力も高く高性能です」
マイ「しかし本体が大きすぎること、有線で繋がっていながら本体が動かねばならないこと」
マイ「MAということもあり機動力はあれど回避には専念しなくてはならず、かつオールレンジ攻撃と併用しなくてはならないことなど」
マイ「普通に考えたらとてもではないが扱いきれない問題だらけのMAです」
マイ「使い手に求める点が多すぎるのです。だから本来運用するなら複数名が必須のはずなのですが……」
マイ「少尉はいとも容易く扱い、模擬標的を寸分違わず全滅させていきました」
シャア「……そうだな……」
マイ「大佐、これはブラウ・ブロの潜在能力を扱いきった結果でしょうが……」
シャア「中尉の懸念通りさ。ブラウ・ブロ自体は高性能だが、本来の運用理論を考えると不十分といえる」
シャア「中途半端なんだ。オールレンジ攻撃を操るMAとしても、単純なMAとしてもな」
シャア「あれならば、オールレンジ攻撃をせず直接機体から撃ち込むのでも火力は出せる」
マイ「しかしそれでは……」
シャア「うむ。故の中途半端だ」
シャア「一号機なのだから仕方あるまい。これから改良していけばいい」
マイ「分かりました。評価は辛口につけておきます」
マイ「…………」
シャア「…………」
マイ「…………」
・
・
・
シャア「ララァ遅すぎないか」
マイ「はい、もう来ていてもいいくらいなのですが」
マイ「迷っているのかもしれません」
シャア「ドックの隣だぞこの部屋は……どうせまた寄り道をしているな」
シャア「仕方無い。迎えに行くとするか」
マイ「はい、行きましょう」
《何をチンタラやっているんだい!?》
《さっさとゲルググ用の装備を積み込むんだよ!!それともうちのゲルググをお前ら同様のタマ無しにするつもりかいっ!?》
整備士「はっはいっただいまっ」ガチャコンガチャコン
ララァ「…………」フワァ
整備士「あ、こらお嬢ちゃん危ないよ。あっちに行ってなさい」
ララァ「あの声を出している人は何処にいるのかしら」
整備士「ん、突撃機動軍の将校さんだよ」
整備士「あそこに戦艦があるだろう?ザンジバルって言うんだけどね」
整備士「あそこからどやしてんだ。急がないと本当にタマ潰されちまうよ」
整備士「っと……お嬢ちゃんの前で言うことじゃないな。済まない」
ララァ「ありがとう、整備士さん」トンッ
整備士「あ……」
整備士「……あんなひらひらした服着てたら見えちまうぞ、全く」
シーマ「……はぁ……」ガタンッ
デトローフ「シーマ様、大丈夫ですかい?」
シーマ「何がだい」
デトローフ「いや、目のクマが……寝不足でしたら補給は我々が見ますから、お休みになってください」
シーマ「はっ……それは私が毎晩魘されていることを知っていて言ってるのかい?」
シーマ「黙って仕事をおしよ。どうせ出航したら、また顔すら見せないアサクラの隠れ蓑に使われるんだからねぇ」
デトローフ「……は……」
デトローフ(無理もない……G3ガス注入からまだ一年も経っちゃいない)
デトローフ(最初なんか堅物な女将校だったってのに、あれ以来拗ねちまって今じゃ女傑だからなぁ……)
デトローフ「あたぼうよ///」
デトローフ「……ん?」
ララァ「?」
シーマ「副長、そいつは何だい。」
デトローフ「げぇっ!?」バッ
ララァ「あなたがさっきから整備士の人に怒鳴っていた人ね?」
シーマ「……あぁ、キシリア閣下の実験動物かい」
シーマ「ニュータイプだかなんだか知らないが、さっさと出ていきな。この艦にゃ世辞にも柄のいい奴らは少ないからねぇ」
シーマ「お嬢ちゃんみたいな可愛い子は、何されるか分からないよ? おぉ怖い怖い……」
ララァ「……」
デトローフ(そりゃあ無いな)
兵士(俺達はシーマ派だし)
兵士(シーマ様prpr(^ω^))
シーマ「っ……何だい、やろうってのかい!?」
ララァ「涙の痕があるわ」
ララァ「泣いていたのね……ずっと」
デトローフ「!」
兵士「!」
シーマ「な……あ……っ!?」
ララァ「あなたは此処にいてはいけない人よ」
ララァ「地球に降りましょう。あなたをちゃんと見てくれる人を大佐が知っているから」スススッ
シーマ「な、何なんだい?何なんだいお前はっ!?」
デトローフ「てめぇ!シーマ様から離れろ!!」チャキッ
シーマ「みっともない真似をするなコッセル!!」
デトローフ「はっ……!?」
ララァ「…………」
兵士(少女に迫られるシーマ様prpr(^ω^))
ガルマー!早くきてくれー!
シャア「そこまでだ」バッ
マイ「ララァ・スン少尉!無事か!?」バッ
ララァ「大佐」
シーマ「赤い彗星……本物か?」
デトローフ「何だてめえ!さっきからゾロゾロと勝手に入って来やがって、このコスプレ野郎!!」
シャア「コスッ……」
マイ「シーマ艦隊のシーマ・ガラハウ中佐ですね!これはどういうことですか!?」
シーマ「知ったことかい!あたしが一番聞きたいくらいさねッ!!」
マイ「ひぃっ……」
シャア「マイ中尉、君強気な女に弱いタイプだな?」
マイ「はっ……前例からどうにも……」
――――
モニク「くちゅんっ」
ララァ「大佐、この人はガルマ様に会わせるべき人よ」
シーマ「ガルマ……ガルマ・ザビ少将か?」
シャア「……何を思ってそう考えたのかは解らんが、私は反対だ」
ララァ「どうして?」
シャア「コロニー落としの際、コロニーに住んでいた住民をG3ガスにより全滅させた実行部隊の一つ」
シャア「それがこのシーマ艦隊なのだからな」
マイ「……」
シーマ「……そうさ、命令されたからやったまで」
シーマ「あたしらがしなくとも誰かが着た汚名さね、蔑みたきゃ好きなだけ蔑みな」フンッ
シャア「ガルマはコロニー落としに対して良い感情を抱いていない」
シャア「会わせたとしても……」
ララァ「でも大佐、おかしいわ」
ララァ「彼女は知らなかったのよ」
シーマ「っ!?」
ララァ「大丈夫よ。大佐ならきっと良くしてくれるわ」ニコリ
シーマ「ひっ……」ガタンッ
デトローフ「シーマ様!?」
兵士「シーマ様、大丈夫ですかい!」
兵士(よくしてくれる……(意味深))
シャア「……ふむ……」ピキィィィン
シャア「マイ中尉、軍の通信記録のうちシーマ艦隊の開戦当時のものを洗い出せるかな?」
マイ「不可能ではないでしょうが、はっきりとしたものは間違いなく既に処置されているかと」
シャア「このゴタゴタの中だ、人員を使えば尻尾くらいは掴めるだろう」
シャア「それで構わんか、シーマ中佐」
シーマ「なにが構うってんだい……!?」
シャア「汚名返上の機会を与えてやろうというのだ。それを掴むかは君次第だがな」
シャア「なに。あの坊やなら君らの面倒くらいは見てくれるさ。私が保証するよ」
永井一郎「当時のシーマ艦隊に対しアサクラ大佐が告げていたのは【催眠ガス・催涙ガスの類の使用】であり、既に準備してあったそれを偽って使わせたという事実であった」
永井一郎「そもそもジオン内部でも批判が多数あったコロニー落としだが」
永井一郎「これによりおどろおどろしい内情の一端が世に広く知られることと」
永井一郎「ならなかったのである」
シャア「これはカードだ。キシリア閣下とアサクラの不祥事、手元に置いておくだけで十分に機能する」
シャア「グラナダで開発されているMSや物資は魅力的だ。色を付けてもらえるなら、ありがたい限りだよ」
マイ「大佐……しかしそれではシーマ中佐の汚名は!」
シャア「これはシーマ・ガラハウの意見でもあるのだ」
マイ「えっ?」
シャア「彼女、キシリアとアサクラから尻の毛までむしり取ってやると笑っていたよ」クックック
マイ「うわぁ……」
シャア「それに実行してしまった負い目を打ち消せるわけではないとも言っていたからな」
シャア「どうするかはガルマ次第とも言えるが……」
ガルマ『私がガルマ・ザビだ』
シーマ「お初にお目にかかります。キシリア麾下突撃機動軍所属、シーマ・ガラハウ中佐であります」
シーマ「お目通りが叶ったこと、恐悦至極にございます」
ガルマ『話はシャアから大佐から聞いた』
ガルマ『諸君等を騙し、大きな咎を背負わせてしまったことを』
ガルマ『同じザビ家の人間として、まずは謝罪させてほしい』
シーマ「……彼らにもお話は致しましたが、私らがやらねば他の誰かがやったでしょう」
シーマ「それに、話によればガス注入を断りその場で殺された部隊もあったと風の噂で聞いております」
シーマ「私らには選択肢などなかった……謝られたとして、今更としか感じられませぬ」
ガルマ『気丈だな』
シーマ「無礼な物言いでもしなくては……もう手が震えっぱなしで……」
シーマ「……くう……」グッ
ガルマ『…………』
シーマ「それがアサクラ大佐の独断か、キシリア閣下の謀略か、それ以外の何かかさえ……今となっては知る術も無し」
ガルマ『その通りだ』
ガルマ『だが公表はすれば、少なからず実行部隊の君達への誤解は解ける』
シーマ「……汚名も着慣れすぎたら、脱ぐのが躊躇われるもので」
シーマ「国内の混乱まで引き起こし、責任問題を誘発してまでやることではありませぬ」
ガルマ『済まない。君達にそのような気まで遣わせてしまうのは……』
シーマ「海兵隊もジオンの軍隊、ジオンの為ならばこのくらいは当然でしょう」
シーマ「……申し開きも済みました。では、失礼させていただきます」
シーマ「!」
ガルマ『もし戦いが終わり、君達に裁判などの憂き目が来た場合、私の権限が及ぶ範囲で君達を庇護すると約束しよう』
ガルマ『これも口約束に過ぎない。だが覚えておいてほしい』
ガルマ『一艦隊の転属くらいならば、私の方で受け持ってやる。嫌になったら部下を連れていつでも来い』
シーマ「……っ……」
ガルマ『では』
ガルマ『ジーク・ジオン』
ブツンッ
シーマ「…………」
シーマ「ジーク……ジオンっ……!」
シャア「ザンジバル級一隻、ムサイ級六隻の大部隊を受け持ってやるとは、流石に言うことが違う」
ピッ
ガルマ『彼等はザビ家の業の被害者だ。多少の無理をしてでも受け止めてやるのが私の役割だよ』
シャア「自らを器とするのは構わん。だが入れたものを選んで捨てられなくては、食えたものにならんぞ」
ガルマ『選別していけるほど高尚なものを作るつもりはないよ』
ガルマ『もし零れたり倒れそうになったら支えてくれ。君になら背中を任せられる』
シャア「私程度の胸で良いならいくらでも貸すさ。」
シャア「ガルマ、今回のシーマ艦隊への配慮、感謝するよ」
ガルマ『君に感謝されることでもないさ。では、いずれまた地球で』
シャア「ジーク・ジオン」
永井一郎「何故会ってもいないガルマをシーマと会わせたがったのかと」
永井一郎「ララァは答えた」
永井一郎「大佐が信頼する人だから、きっと大丈夫だと思いました、と」
永井一郎「シャアは言葉に詰まりながら一言、そうか、と呟いたという」
永井一郎「そしてその翌日」
永井一郎「ランバ・ラル隊の全滅と、ランバ・ラル少佐の戦死がシャアに耳に届けられることとなるのだった」
レビル「ランバ・ラルを倒したか……」
ブライト「はい、アムロがやってくれました」
レビル「例のMSだな? まさか本当に使いこなせるとは思わなんだ」
ブライト「開発を担当しているのはあの方です。アムロが使いこなせるのは道理かと思われます」
レビル「それの因果は分からんが……まさかあの少年がな」
レビル「ニュータイプという言葉にすら懐疑的になっていた私に、新しい光が差した気分だよ」
ブライト「はっ……」
PPP
レビル「入りたまえ」
ウィィンッ
テム・レイ「しょ、将軍……アムロが帰ってきました……」ブルブル
ブライト「っ……」
テム「アムロとガンダムは最強ですっ! もはやジオンなどものの数ではありません!!」バァンッ
テム「では失礼致します!機体の調整がありますから、あと例の【システム】も……あぁ忙しい忙しい」
ウィィンッ
ブライト「何しに来たんでしょうか……テム・レイ氏は」
レビル「部下が酸素欠乏症の彼を引っ張ってきたときは、もう駄目だと思ったのだがな」
レビル「制宙権がボロボロなせいで、諜報部が躍起になってたこともあるが」
ブライト「まさかこれが大当たりするとは誰も読めなかったでしょうな」
レビル「天才が酸素欠乏症になって鬼才になったなどとな」
アムロ「ふう……」
フラウ「アムロ」
アムロ「フラウ、どうしたんだい」
フラウ「大丈夫?カイさんとハヤト、リュウさんが戦死してから、ずっとふさぎ込んでたのに……」
アムロ「いつまでも膝を抱えてても状況はよくならないんだ。僕が闘わないとホワイトベースのみんなが死んでしまう」
アムロ「今回はランバ・ラルを討ち取れた。【ガンダム部隊】の強さは立証出来てる、これからだよ」
スレッガー「アムロ曹長! 俺のガンダムちゃんの動きはどうだった?」
アムロ「スレッガー少尉、もう少ししたらそっちに行きますよ」
フラウ「アムロのガンダムはスレッガー少尉が乗っているのね」
アムロ「僕にはこの【アレックス】があるからね。スレッガーさんはよく扱えてると思うよ」
アムロ「! 父さん」
テム「はっはっは! 良くやった、良くやったぞアムロ……私が手を加えたアレックスはどうだ、ん?」バンバンッ
アムロ「よ、よく出来ているよ父さん、まだちょっと反応が速すぎるけど……」
テム「馬鹿者ッッ!!」バキィッ
アムロ「うぐぅっ」
フラウ「アムロっ!?」
テム「お前にアレックスを合わせるんじゃあない!アレックスにお前が追いつくのだ!!」
テム「いいかアムロ、お前はそんなもんじゃない。いずれアレックスですらおいつけなくなるほど、お前は成長する!出来るんだっ!」
テム「戦争なんか早く終わらせようアムロ……そうしたら母さんとまた三人で暮らすんだ」
アムロ「分かっているよ父さん……分かっている」
テム「アムロ、例のシステムは使ったか?」
アムロ「あ、あぁ使ったよ父さん」
アムロ「でもあれは過剰すぎる、性能を通常の20%にまで引き上げられても、あれじゃあ機体が保たないよ」
テム「問題はない!!パーツなんかいくらでも造らせるからな!!」
テム「クルスト博士は間抜けだった……素晴らしいシステムには思想なんか盛り込んではいけないのだ」
テム「EXAM!!馬鹿々々しい!!」
フラウ「ひっ」ビクゥ
テム「敵の思考を電波反応で探知し、ニュータイプの特殊な脳波を感知して叩く!!はっ!!私の前でそんなトラップを仕掛けたのが運の尽きよ!!」ガシッ
ハロ「タスケテ タスケテ」ジタバタ
テム「なぁハロ……私はEXAMシステムを解体してやった」
テム「そしてEXAMシステムの中の【機体の性能を過剰に引き出す部分】だけを抜き出しアレックスに搭載したぁ!!」ブンッ
ハロ「アー」
テム「システムのONOFFは自由であるべき!システムの調節は柔軟性があるべき!」ブンブンブンブン
テム「ニュータイプを探す機能も意図的な暴走も殺意による暴走もシステムの同士討ちも要らない!!」ダダムダムダム
テム「そうっ!!まさに純粋なパワーアップシステムとして私は昇華させたのだぁぁぁ!!」ガンダムッ
ハロ「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙」
アムロ「父さん!ハロはバスケットボールじゃないよ!!」
テム「あ、でもアレックスに不具合あるのも困るから性能アップの割合下げようか」ポイッ
フラウ「おじさま……っ」ビクビク
フラウ「おじさま……酸素欠乏症にかかってあんな……」
アムロ「いや昔からテンションはあんな感じだったよ……」
フラウ「そ、そうなの……?」
アムロ「昔に比べるとキレが少し無くなったかな……父さん」
フラウ「……私アムロの家のこと全く知らなかったのね……」
アムロ「あんなのでも僕の父さんだからね、僕が戦って守ってあげなきゃ」
セイラ「アムロ、私のG3、左側の肘の具合がおかしいみたいなんだけど……」
アムロ「はい、今行きますよ」
テム「このピクシーの調整をした奴は誰だぁ!?」
フラウ(アムロ……アムロがだんだん遠くなっていく気がするわ)
フラウ(お願いよアムロ……無茶だけはしないで)
ユウ「!」
テム「…………」
ユウ「…………」
テム「君、搭乗機体は」
ユウ「…………」つジムコマンド
テム「…………」ジー
ユウ「…………?」
テム「……採用」ポンッ
ユウ「…………」コクリ
テム「空いてるのはあったかな……エイガーのMS適性低すぎるから乗せかえちまうか」ピッピッ
エイガー「えっ」
永井一郎「本来ならば戦いはア・バオア・クーへと移行し、この短い戦争が集結を迎える頃合いのはずだったが」
永井一郎「オデッサにおける反攻作戦の失敗は思わぬ遅延を生み、連邦軍は1ヶ月以上もの間、臥薪嘗胆のときを過ごすこととなったのだ」
永井一郎「しかし結果として、戦争末期に生まれた名機、不遇の傑作が集結」
永井一郎「ジャブロー攻略戦は、両雄のエース、地上戦力、その全てを投入した一大決戦の場となるのだった」
永井一郎「それはまさに、互いの最大戦力のぶつかり合いという、浪漫であった」
そりゃラルさん死にますわ
シャアは謀っちゃうのかな
G3
ピクシー
ガンダム
あとユウが乗るなんか
五機のガンダムがいるのか
ガルマ「ランバ・ラル大佐に、敬礼!」
シャア「……」スッ
兵士達「「「」」」ザザザザッ
マイ「…………」ビシッ
・
・
・
シャア「ラル少佐……二階級特進して大佐か」
シャア「昇進は部下の生活の安定に繋がると常日頃言っていたが……死んでしまっては元も子もあるまいに」
ガルマ「……私のギャンを預けていたのだが、まさか青い巨星が墜ちるとはな」
ガルマ「ガンダム……やはり恐ろしい存在となり我々に立ちふさがるか」
マイ「ラル大佐……ギャンKが届けられていれば……もしかしたら」
シャア「過ぎたことにおける仮定の話はナンセンスだ。止めておこう」
マイ「はい」
前々回のオデッサでの戦功で少佐に昇進
このシリーズの最初のSSでオデッサ戦での功績が認められて昇進した
シャア「20機だと……?」
マイ「情報によりますと、大半が陸戦用に製造されたガンダムのようです」
マイ「性能は例の白いガンダムに劣るようですが、それでも装甲やパワーは圧倒的です」
シャア「あまり考えたくはないな……あのガンダムが犇めいている環境とは」
ガルマ「あそこまでの性能で部隊運用されると、非常に厄介だ」
シャア「崩しようがないからな……一般兵士が束でかかってもまとめてスクラップだ」
マイ「まさに白い悪魔ですね……」
ジョニー「そのために俺達が来たんだろう?」
ガルマ「!」
マイ「【真紅の稲妻】ジョニー・ライデン少佐!」
マツナガ「ギャンの雪辱は同じギャンが晴らしましょう」
マイ「【白狼】シン・マツナガ大尉!!」
シーマ「良いことじゃあないか、選り取り見取り……ふふっ」
マイ「【海兵隊】シーマ・ガラハウ中佐!!」
ガイア「俺達も忘れてもらっちゃ困るぜ」
マイ「【黒い三連星】ガイア少佐・オルテガ大尉・マッシュ大尉!!」
ガトー「英霊達の悔恨の念、胸を打ちますな」
マイ「…………!」
ガトー「アナベル・ガトー大尉であります。ドズル中将の命により馳せ参じました」
ガルマ「兄上から聞いている、戦果を期待するよ」
永井一郎「【ソロモンの悪夢】の名はここでは語られていない」
ジオンのエース勢揃いだ
ジョニー「……」チラッ
マツナガ「……」チラッ
シーマ「…………」パチンッ
ガルマ「よく来てくれた、シーマ中佐」
シーマ「お呼ばれには肖りたくなるもので、よろしくお願い致しますよガルマ様」
シーマ「降りてこられたのはリリーマルレーン含めて海兵隊三部隊、全機ゲルググ。お好きなように使い潰してくださいな」
ガルマ「使いはするが潰しはしない。海兵隊も貴重な戦力だ、功を焦るなよ」
シーマ「……百も承知で」パチンッ
シャア「ガルマ」
ガルマ「あぁ」
ガルマ「これより我らは、連邦軍の拠点であるジャブローを攻略する!」
ガルマ「例の木馬がジャブローに入港する際、我々の工作員が潜入しジャブロー宇宙船用ドックを発見した」
ガルマ「位置の特定も完了している。この長きにわたる重力戦線に終止符を打つは、今を除いて他にはない!」
ガルマ「ランバ・ラル大佐はその最終チェックの為に赴いた先で撃墜された。いわば彼の弔い合戦である」
ガルマ「青い巨星墜つるとも、その輝きは永久に消えぬことを、連邦軍の兵士はその時を以て、諸君等の手により知ることになるのだ!!!」
ガルマ「ジーク・ジオン!!!」
『『『ジーク・ジオン!!』』』
『『『ジーク・ジオン!!』』』
『『『ジーク・ジオン!!ジーク・ジオン!!ジーク・ジオン!!!』』』
永井一郎「連邦軍の最大最後の地上拠点、ジャブロー」
永井一郎「圧倒的な対空防御力、圧倒的な兵力数、圧倒的な物資備蓄量」
永井一郎「ガルマが戦いを万全にするべく決戦を遅らせた結果」
永井一郎「ジャブロー及び南米全域には、千を遥かに上回る数のジムが配備されていた」
永井一郎「もはや他に護るべき場所もないという連邦軍高官の恐怖と覚悟が、ジャブローの防御力を過剰なまでに増強させ、今や南米は大陸兵器と呼べる存在と化していた」
永井一郎「対するジオン公国軍は、統合整備計画における改修改修と生産されたMSを惜しげもなく投入」
永井一郎「大陸を総なめにする勢いで侵攻する大規模作戦を実施することとなった」
ピチュンピチュンピチュンピチュン
ピチュンピチュンピチュンピチュン
デトローフ「し、シーマ様!!対空砲とMSが、まるで針山ですぜ!?」
シーマ『ごちゃごちゃ抜かすんじゃあない!』ジーッ
シーマ『良いかい、あたしらはここで働けなきゃ本当にジオンに居場所がなくなるんだ!』バサッ
シーマ『死に物狂いで突っ込みな!邪魔する奴らに容赦なんかするんじゃないよ!』シュル…パサッ
デトローフ(くそっ、サウンドオンリーなのが憎たらしい!)
兵士(妄想しろ、音だけで情景を紡ぎ出すんだ……!)
兵士(うっ……ふう……)
シーマ『ゲルググ隊、準備しな!』
シーマ『降下準備だ。片っ端から吊してやりな!!』
『『おぉぉ!!』』
マイ「シャア大佐、リリーマルレーン、キマイラ、マダガスカル、全て戦闘を開始しMSの降下準備に入ったようです」
シャア「幾ら先週定期便を毎日追加したからと行って、MSと対空砲が無くなった訳ではない」
シャア「私も出るぞ。【例のアレ】が通り過ぎてから一気に地上から距離を詰める」
マイ「ご武運を、大佐」
シャア「ララァと約束しているからな。宇宙に戻ったらザクレロよりもっと良いMAを見繕ってやらねば」
マイ「あの話まだ続いていたんですか」
シャア「仕方ないだろ……ザクレロが欲しいっていうから、もっと良い奴あげるからザクレロだけは止めなさいって説得せざるを得なかったんだ」
ザバッ
連邦兵「えっ?」
ドシュッ
グシャアッ
ハーディ(ズゴE)「おやすみ、坊や」
ミーシャ(ハイゴ)「しかし厄介ですな。水路にはあちらこちらに機雷が仕掛けてありますよ」
ガルシア(ハイゴ)「これならゴッグのがよかったかも知れねえや。ハイゴッグじゃおっかなびっくりだぜ」
アンディ(ハイゴ)「どうしますか隊長」
ハーディ「そうだな……っ!」
ズビィィッ
ミーシャ「ビーム兵器か!?」
ガルシア「来るぞ!!」
アニッシュ(陸ガン)「見つけた!水中用の新型だ!」
ラリー(陸ガン)「好き勝手やってくれるじゃないか……!!」
マット(陸ガン)「うおおおおお!!」ヴンッ
ズキュゥゥン
マツナガ「さぁ、どうしたひよっこ共」ブンッ
ジョニー「この真紅の稲妻を討ち取って、レビルの爺さんに誉めてもらおうなんて良い子はいないのかい?」ジャキンッ
連邦兵「くそっ……」ジリジリ
ブォォッ
ジョニー「! 大尉、左だ!」
マツナガ「速い……!」
ズギャァァァッ
マツナガ「うぉぉ!?」
ジョニー「何つうビーム兵器だ……っ!」
ユウ「ユウ・カジマ、敵エースと思われるMSを視認した」
ユウ「マドロックで迎撃に入る。至急応援を頼む」
モーリン『了解です』
フィリップ『ユゥゥ、お前俺達が行く前にぃ、獲物取り尽くしちまうんじゃあねえぇぞぉ?』
ジョニー「となると、周りにガンダムタイプがうじゃうじゃいる可能性が高いな」
マツナガ「退きますか?」
ジョニー「こっちからの要請はちとミノフスキーが濃くて届かないな……」
ジョニー「……やるか、大尉」ジャキンッ
マツナガ「はは、そう来なくては」ヴンッ
ユウ「付近の友軍に通達する」
ユウ「……俺から離れろ。今すぐにだ」ゴゥッ
・
・
・
シャア「……此処か」
アッガイ(アカハナ)「はい、間違いありません」
シャア「ケンプファーのコンセプトが正しいことを示すには良い機会だな」ガシャコンッ
マイ『やはり対空砲を事前にある程度は沈黙させているせいか、降下自体は出来るのですが』
マイ『水路に機雷、森の中に地雷と、MSを普通に進めることさえ困難な状態です』
シャア「やはりそうか。奴らめ……」
シーマ『シャア大佐、ここにいらしたか』
シャア「中佐か」
シャア「これからモグラ叩きにいくところだ、付き合うかね」
シーマ『モグラよりもっといいものを叩きに行くんだろう?』
シャア「運良く出会えるなら叩くがね」
シーマ「そういうときは嘘でもそうだと言うものさ」
シャア「ふっ……では行くぞ。離れていろ」ジャラララッ
チュドォォォォン
ブライト「何事だ?!」
フラウ「大変です、敵が地上の搬入口を発見し次々に侵入してきます!」
アムロ「僕が行きます」
ブライト「アムロ……」
アムロ「危険な男が近づいてきています。ガンダム部隊を僕に預けてください」
アムロ「シャアが……来る!」
【そして、宇宙】
ギレン「……ふふふふふ」
ギレン「ガルマはよくやってくれた」
ギレン「だが、これまでよ」
ギレン「ジーク・ジオン……」
永井一郎「シャアを始めとして、合流したMSの総数は30を越えていた」
永井一郎「うちシーマ隊のゲルググはシーマ機を除いても12機」
永井一郎「洞窟を駆け抜け、現れるMSを薙払う一軍はまさに無敵といえた」
永井一郎「しかし、シャアは何かを感じ取っていた」
永井一郎「とても恐ろしい、何かを」
シーマ「やれやれ、こんなものかい。連邦軍の最大拠点ってもさ」
ガトー「大佐、敵は広く大陸を要塞化するあまり内部には気を遣っていないのでしょうか」
シャア「さてな……先ほどからイヤな感覚がつきまとっているんだ」
シャア(まるで誰かに見られているような……何だ?)
アカハナ「こちらから進めるようです。反応があります」
シャア「……待てアカハナ、待て!」
ズキュゥゥン
ズキュゥゥン
アカハナ「 」ビシィッ
海兵隊「ぎゃぁぁっ!」ビシィッ
チュドォォォォン
ガトー「何!?」
シーマ「ビームライフルかい!?」
シャア「ちぃっ……来たか!」
貴重なアッガイたんが・・・
ガトー「ぬうあああああ!!」ヴンッ
アムロ「っ!」ピキィィィン
ガトー「なっ……!?」
アムロ「わぁぁぁぁ!」ダッ
シャア「ガトー大尉!」
アムロ「!」ズキュゥゥン
海兵隊「ぐわぁぁっ」ドシャッ
シーマ「他のガンダムか!?」
シャア「これは……!」
永井一郎「アムロが飛び込み、攪乱し、あらゆる方向から他のガンダムがビームを撃ち込む」
永井一郎「地の利を生かした待ち伏せに遭い、部隊は足止めを受けてしまう」
永井一郎「何とか迎撃せんと引き金を引くが、相手はまるでこちらの動きを分かっているかのように避けてしまう」
永井一郎「シャアの額に汗が浮く、そして確信した」
永井一郎「ガンダムのパイロットは、ララァと同じニュータイプだと」
アムロ「赤いMS、シャアだな!?」
シャア「おおおおお!」
アムロ「でやあああああ!」
シーマ「大佐を援護しな!早く!!」バババババ
アムロ「こざかしい!」バッ
シャア「くぅ……!」
シャア(やはり圧倒的……いや、それすら上回る何かがこのパイロットにはある)
シーマ「大佐! どうするんだいこんな化け物をさ!?」
シャア「……足止めする!」
ガトー「倒すのは諦めると……!?」
シャア「少なくとも、倒されずにガンダムをここに留めておければ、他の搬入口から侵入したMSは目的を達成してくれるはずだ」
シャア「友軍を信じて耐えるしかあるまい……!」
シーマ「とんだ貧乏くじじゃあないか……!」
ジョニー「へ……へへへ……どうだい、ガンダム……!」
ユウ「ぐぅぅ……!」
マツナガ「ライデン少佐!」
永井一郎「エースも、新兵も、等しく傷つき、倒れていく」
ハーディ「アンディ……!」
マット「撃て、ラリー!!」
永井一郎「そして」
永井一郎「それは、墜ちてきた」
アムロ「っ……!」ガシッ
シャア「なに!?」
アムロ「腕さえ掴めれば、アレックスの勝ちだ!」ジャキンッ
シャア「ガトリングだと!?えぇい!!」
ガガガガガッ
バババババッ
アムロ「うわぁぁぁ!」パリンッ
シャア「くぅぅぅ……!」ボゥンッ
ガトー「大佐ぁ!」
シーマ「シャア大佐!!」
ズシィ……ィン
アムロ「……たかがメインカメラを半分やられただけだ」
アムロ「しかしシャア、お前達の負けだ!」ジャキンッ
シャア「ここまでか……!」
アムロ「……なっ!?」
シャア「何だ、地響きか?」
アムロ「違う……これは、何かが墜ちてくる!?」
―――
ガルマ「兄上……これはどういうことですか……!?」
ギレン『はて、どういうこととは』
ガルマ「何故なのです……何故なのです……」
ガルマ「我々の頭上にコロニーが……!?」
ギレン『……』ニヤリ
ジャブロー攻略で一番手っ取り早い最悪の手段をwww
ギレン『今や制宙権は完全に我らのものであり、地上はお前がしっかりと掃除してくれたからな』
ギレン『今やコロニーを丸々落とす必要も無い。先端部分のみを切り取り、落とすことくらい容易なことだ』
ガルマ「……」クイックイッ
兵士(! 全部隊に撤退命令……非常事態宣言!)コクリ
ガルマ「……今地上部隊のどれほどがここに集結しているとお思いなのですか」
ガルマ「何故事前の連絡をしてくださらなかっ……!」
ギレン『したさ』
ガルマ「……はっ?」
ギレン『事前の連絡をしたにも関わらず、お前は功を焦り全軍を率いて、我々に無断で、ジャブロー攻略作戦を決行した』
ギレン『そういうシナリオなのだよ。ガルマ少将、いや』
ギレン『ガルマ【元】少将……』
ガルマ「謀ったな……兄上ぇ!!!」
ヴゥーン
マツナガ「! 撤退命令……だと!?」
ジョニー「くそ……俺達はたばかられたってわけか……ゲホッ」
マツナガ「喋らずに、今止血をしています」
ジョニー「構わず逃げな……あんなんが落ちてきたら、助からないぜ……」
マツナガ「ギャンならばまだ動きます。さ、掴まって」グッ
ジョニー「ッ……済まない大尉」
マツナガ「生きて帰れたなら、一杯奢ってください」
ジョニー「良い店を知ってるんだ……」
マツナガ「それは楽しみですな」
ギレン『諸君等が名誉の戦死を遂げても、地上部隊を覆す力はもはや連邦軍には残されていない』
ギレン『初めからこうしておけばよかったのだ。私の言うとおりにしていれば……な』
ガルマ「私は、貴方をもっと聡明で人間味がある男だと買っていた!」
ガルマ「まさかここまでの買いかぶりだったとは……っ!!」
ギレン『何とでも言うが良い。増えすぎた人類を管理するには、お前のような甘さがあってはいかんのだ』
ギレン『死ね。死んでジオンの礎になれ。さらばだガルマ』
ブツンッ
ガルマ「ッ……!!」
バンッ
ユウ「っ……とにかく離れろ!ジャブローから一刻も早く!」
サマナ『間に合うでしょうか……!?』
ユウ「どうだかな……少なくともジオンの奴らも戦う気は無いらしい……!」
フィリップ『大丈夫かぁユウゥ……両腕が無いんだからよぉ、あんまり無理すんなよ』
ユウ「分かっている……!」
――――
ハーディ「どうやら逃げるしか手はなさそうだな」
ガルシア「隊長!俺達は海へ!」
ミーシャへ「他の奴らは大丈夫なのかぁ……!?」
ハーディ「無事を祈るしかあるまい……急げ!」
兵士「ガルマ様、我々も一刻も早く退避を!今ならばまだ間に合うかもしれません!」
ガルマ「済まん。お前達は全員他のガウで退却してくれ」
兵士「ガルマ様……!?」
ガルマ「私とてザビ家の嫡子……」
ガルマ「それ以前に、男としての意地があるっ!!」バッ
・
・
・
シャア「……駄目だな、限界だ」
ガトー「こちらもです、盾で叩かれた際にどこかいかれたようですな」
シーマ「最後の最期までコロニー落としかい……私もケチだらけの人生だったねえ」
シャア「…………」
ゴゴゴゴゴ……
シャア「どうやらお互い逃げられないようだな、ガンダムのパイロット」
アムロ「…………」
アムロ(あのクソ親父……『整備性が悪くなるだけだから』とか難癖つけてガンダムからコアファイター取っ払いやがって……)
スレッガー『おいアムロ!いいのかよそいつらの前に姿出してよ!?』
アムロ「ジャブローから地上に出るのに手間取りすぎました。もう戦う意味なんかありませんよ」
スレッガー『くっそ!おれは出ねえからな!死んでもごめんだ!』
シーマ「良かったね、遅かれ早かれみんな死ぬよ」
『兄さん……!?』
シャア「!?」
ウィィンッ
セイラ「そんな……やっぱり、兄さんなの?」
シャア「あのときの女……アルテイシア……いや、まさか!」
セイラ「キャスバル兄さん!」ダキッ
シャア「アルテイシア……!」
アムロ「そんな……シャアがセイラさんのお兄さん!?」
ガトー「きゃ、キャスバル?」
シーマ「アルテイシアって……え……」
ガトーマ「ええええええええええええ!?」
スレッガー『何だようるせえなぁ』
・
・
シャア「まあ、つまりはそういうことだ」
ガトー「ジオン・ズム・ダイクンの血を引く者がこのような姿で身を隠していたとは……」
シャア「今となってはもはや過ぎた話だ」
シャア「しかしコロニー落としに兄妹揃って巻き込まれて死ぬとはな……つくづく哀れな星の巡りに生まれたものだ」
セイラ「うっうっ……兄さん……」グス
ガトー「連邦軍のパイロット、何とかならんのか!?」
シーマ「なるようなら今頃逃げてるさなぁ」
アムロ「……はい」
シャア「……ある意味これも私が蒔いた種か……」
シャア「我ながら虚しい人生だったな……」
『ザザッザッザザ』
『ザザッシャアッザザ』
シャア「……ん?」
シャア「ガルマ……!?」
アムロ「あ、あれは……!!」
ガトー「ガウが突っ込んでくるだと!?」
バキバキバキ……
ズゥゥ……ゥゥゥン
シャア「な……」
ガタンッ
マイ「シャア大佐!早く乗ってください!!もう限界です!!」
シャア「マイ中尉……!」
ガルマ『何をしている!!さっさとしないか馬鹿者!!』
シャア「馬鹿者はどっちだ馬鹿者!!こんな……何故だガルマ!?」
ガルマ『君は良い友人だからな。兄上がいけないのだよ』
シャア「……馬鹿者が……」
セイラ「兄さん……!」
マイ「連邦軍の兵士もですか!?」
シャア「不服かね?」
マイ「上官の命令ならば従いますよ」
シャア「なら命令しよう」
マイ「了解しました」
シャア「……ガンダムのパイロット!」
アムロ「!」
シャア「君もニュータイプならば、真の敵が誰かを見極めたくはないか!?」
アムロ「あなたについて行けばそれが分かると言うんですか……!?」
シャア「教えてやる、と上から言うつもりはないよ」
アムロ「……わかりました。乗ります!」
シャア「ガルマ!!」
ガルマ「シャア!!」
シャア「全く、お前は……!」
ガルマ「説教ならば後にしてくれ、兎に角飛ばすぞ、しっかり掴まれ!」グイイッ
――――
シーマ「ほら、さっさと積み込みな!!」
スレッガー『ちゃっかりしてやがるぜ、この女!』
シーマ「ふふん、せっかく連邦の白い奴がこんだけいるんだ、貰っていかない理由なんかありゃしないさ」
アムロ『これで全部です!』
シーマ「ハッチ閉めろ!!後は……」
シーマ「……神様にでも祈るんだね」
ゴゴゴゴゴ……
・
・
カッ
・
・
・
ギレン「…………」
兵士「ギレン様」
ギレン「どうだった」
兵士「ジャブローはコロニーの直撃により完全に崩壊」
兵士「地殻変動と衝撃による地震が相次ぎ、爆心地から200キロ圏内は完全に消滅しました」
ギレン「そうか……」
兵士「それとガルマ様の旗艦であるガウが太平洋に墜落しているのが発見されました」
兵士「中はもぬけの殻で、もし誰かが乗っていたならば生存率は0に等しいとの分析が……」
ギレン「ご苦労。下がれ」
兵士「はっ」
ギレン「…………ふ」
ギレン「ふふふ……ふふふははは」
ギレン「はーっはっはっはっはっは……!!」
ギレン早く逃げろ
ギレン「どうした」
『キシリア様から通信が来ておりますが』
ギレン「……繋げ」
ピッ
キシリア『兄上、此度の地球連邦軍完全打倒の一件、お見事にございました』
キシリア『……とでも言うと思ったか奸賊め。よくもやってくれたな、貴様は』
ギレン「口を慎むのだなキシリア。もはや連邦軍は崩壊した。地球圏は我らジオン公国の管理下に置かれることとなったのだ」
キシリア『我ら?貴様一人の間違いだろう』
ギレン「そうともいうな。もし他の兄弟がいなくなったらの話だが」
キシリア『……父上はどうした』
ギレン「さあ?公式には病気で療養中とあるが私にも真偽は分からん」
キシリア『正体を顕したな、魔物が……』
ギレン「ふっ、私ほど人間らしい人間はいないと自負しているのだがな」
ギレン「だが妹とて身の振り方は考えておくのだな……キシリアよ」
キシリア『……ふふふ』
ギレン「? いきなりなんだ、気でも触れたか」
キシリア『いえ、ちょうど【始まった】ところでしたから、つい』
ギレン「なに……?」
バタンッ
セシリア「はぁ……はぁ……閣下!!」
ギレン「!?」
キシリア『兄上もお甘いようで……』
セシリア「地球連邦軍のプロパガンダに……!」
セシリア「ガルマ様が!!」
キシリア『では兄上』
キシリア『ごきげんよう……』
ピッ
ガルマ『それは良かった!この地球を汚すような真似を、宇宙に住まうコロニー市民の生活を脅かしてまでするなど、正義である筈がないのだ!!』
ガルマ『だが!再びコロニーは落とされた!それも、公国の為にその命を燃やし、戦っていた兵士達の頭上にである!!』
ギレン「馬鹿な……コロニー落としの中で生き延びられるはずが……」
ガルマ『これは悪である!公国は正義を、正しさを謳い戦いを始めた!私もその正義を信じて戦い、兵士達もまた正しいと感じたからこそ戦った!』
ガルマ『ならばっ!どこで間違えた!どこで悪に染まったのだ!?』
ガルマ『このコロニー落としを計画したのは、誰だ!!!』
デトローフ『ギレンだー!』
兵士『ギレン・ザビだー!』
兵士『ギレンが悪だー!!』
ギレン「ッ……!」
ガルマ『ジオン・ズム・ダイクンが提唱した、真に独立したスペースノイドの姿!』
ガルマ『魂を重力に引かれず、革新した精神を持った人類の寄りどころであったはずである!!』
ガルマ『ならば、民の上に立ち、牽引する力を持つべきなのは、ザビ家ではない!』
ギレン「なに……!?」
ガルマ『ここにいるッ!!』バッ
ガルマ『ジオン・ズム・ダイクンの遺児、キャスバル・レム・ダイクンなのである!!』
バサッ
シャア『…………』
ワァアアアア……!!!
ギレン「キャスバル……キャスバル・レム・ダイクンだと……!?」
ギレン「ガルマ貴様、まさか自分諸ともザビ家を潰すつもりか……!!?」
シャア「断る」
ザワッ
ガルマ「……どうしても駄目か、シャア」
シャア「私はキャスバル・レム・ダイクンとしての生を捨ててきた男だ」
シャア「今更父の名を継ぎ、人々を導けだと?」
シャア「それこそガルマ、君の責任だったはずだ」
ガルマ「……」
セイラ「兄さん……」
シャア「アルテイシア、お前もガルマの言うような道を進めなどとは言うまいな」
シャア「父は理想のために、民草のために働いた。そして死んでいった」
シャア「父を暗殺し、父の理想だけを剥ぎ取り、このような戦争を引き起こしたのはザビ家だ」
シャア「だが、それに踊らされた者達も、私にとってみれば同罪だ」
シャア「父は、理想に殺されたのだ!」
ガルマ「…………」
ガルマ「……何となく、理解はしていたさ」
シャア「イセリナとの逢瀬でジオンを捨てると語っていたときなどは、心底蔑んだ」
ガルマ「あれには私も自己嫌悪したよ」
シャア「グフがおかしいとか言い出したときには遂に狂ったかと心配したくらいだ」
ガルマ「なっ……グフはおかしいだろうグフは!?」
シャア「続けてギャンにケチつけだしたときはひどいものだった!私もギャンが欲しかったのに!!」
ガルマ「何を!!どうせギャン乗りは女の子にモテるとかそんな下心からだろうが!!」
ジョニー「……」ドキッ
ガトー「……」ドキッ
シャア「ちちちちちちがわい!!」
ガルマ「お前は昔から分かり易いんだ!!ばーか!!」
ガルマ「ぐぬぬぬぬ……!」
セイラ「兄さんもう止めて!別の意味で見てらんないわ!!」
マイ「……確かに、人の上に立つことは容易ではありません」
マイ「ですがシャア・アズナブル、貴方はザビ家への復讐を果たしてから政治に関わるつもりはなかったのですか?」
シャア「……私は世直しなど考えられる男ではない」
マイ「私は貴方ではないし、貴方ほどの力も地位もない」
マイ「ですが何かを大きく変えようとするならば、その大きさに従って責任もまた大きくなるはずだと私は思います」
シャア「…………」
ガルマ「だが今しかないのだ。宇宙世紀に生きるスペースノイドの目に、正しいジオン・ズム・ダイクンの考えを見せるには!」
シャア「だが、私は……」
ガルマ「私は咎を負わねばならん。人々の想いを受けるには、この血はあまりに罪深い」
マツナガ「ガルマ様……」
ガルマ「お前からザビ家が奪ってしまったものを少しでも取り返す最後の機会になるかもしれないのだ、シャア!!」
セイラ「もう結構よ……こんな話!」
セイラ「奪っておきながら駄目になったら無理やり返そうだなんて、虫が良すぎてよ……っ!」
ガルマ「う……」
セイラ「兄さん、帰りましょう?」
セイラ「エドワゥでもシャアでもいいわ、どうせクワトロを名乗るかも知れないけど!!」
シャア「おい」
セイラ「こんなこともう止めましょう……兄さん……っ」グスッ
シャア「…………」
シャア「……しばらく……一人にしてくれないか」
セイラ「兄さん……!」
バタンッ
ガルマ「シャア…………」
マイ「ガルマ様、やはりあの方に押しつけてしまうにはあまりにも……」
ガルマ「……まだ甘えているのかも知れんな、私は」
ガルマ「済まないアルテイシアさん。私も、分からんのだ……」スッ
バタンッ
セイラ「…………」――――
シャア「…………」スタスタ
ドンッ
シャア「うっ!」
アムロ「わっ!?」
アムロ「あなたは……!?」
・
・
・
シャア「……」
アムロ「……」
アムロ「そんなことがあったんですね……」
シャア「……君に答えを求めている訳じゃないのさ」
シャア「ただ、父が思想に示したニュータイプ、その実物たる君がどのように感じて答えを出してくれるか、少しばかり気になったのさ」
アムロ「あなたもニュータイプでしょう?」
シャア「自分では分からないものだ。例えそうだとしても、たかが知れているだろうさ」
シャア「だろうな。私もあの場で君達に三十人以上の部下を殺され、ラル大佐も失った」
シャア「戦争とはそういうものだ。敵と味方とは……そういうことだ」
アムロ「…………」
シャア「ガルマともそうだったはずなんだがな」
アムロ「何故、殺さなかったんですか?」
シャア「父を暗殺されたザビ家の人間……彼の側にいればいずれ機会は巡ると判断していた」
シャア「だが、つい奴が馬鹿みたいに張り切って頑張ったりしてるのを見ると、ついつい手を貸したくなってな」
シャア「理想ばかり高くて、諦めきれずに足掻いてばかりの坊やを見ていると、こう……つい、な」
シャア「何処までやれるのかとか、やり遂げられるのかとか、見たくなるのさ」
アムロ「…………」
シャア「奇妙だとは思わんかね」
シャア「……そうなのかね?」
アムロ「誰かが誰かを許すことは、とても難しいことだと聞いたことがあります」
アムロ「今は、あなたを前にしているから分かる気がしますが、きっと僕達の繋がりとガルマさんの繋がりは違うと思うから」
シャア「私はガルマを憎んでいないと?」
アムロ「今は、もう」
シャア「……私は既に許していたのか……?」
シャア「ふ……だとすれば私は滑稽だな」
シャア「復讐の為だけに名前を変え、血を吐くような努力をしてきた」
シャア「ザビ家憎しの感情だけで今までどの様な苦難も乗り越えてきたというのに……」
アムロ「だからでしょう?【赤い彗星】」
シャア「!」
アムロ「キャスバル・レム・ダイクン以上に、貴方はシャア・アズナブルだ」
シャア「……私はシャア、か」
アムロ「あ、はーい!すっかり忘れてました!」
スレッガー「頼むよアムロ曹長、俺一応脚骨折してんだからさ」
アムロ「では」
シャア「アムロ・レイ!」
アムロ「! はい」
シャア「もし私がキャスバル・レム・ダイクンとして立つならば、君は私の同志になってくれるか?」
アムロ「……シャア・アズナブルにならば、喜んで」
シャア「そうか……ありがとう」
アムロ「失礼します」パタパタパタ
シャア「…………」
ピッ
シャア「私だ。グラナダに繋いでもらえるか」
シャア「あぁ、ララァ・スン少尉に繋いでほしい」
ララァ『大佐、御無事だったのですね?』
シャア「なんだ、あまり心配そうな言い方ではないな」
ララァ『シャア大佐ならきっと、大丈夫だと思っていましたから』
シャア「そうか……それもニュータイプの力によるものかな?」
ララァ『何でもニュータイプと絡めてしまうのは、嫌いです』
シャア「ふふ、済まない」
シャア「……なあララァ」
ララァ『はい、大佐』
シャア「私が王様になると言ったら、君は笑うかね」
ララァ『シャア大佐が王様に?』
シャア「あぁ、王様だ」
ララァ『…………』
ララァ『ぷっ』クスクス
ララァ『うふふふ……あはははは』ケラケラ
シャア「そこまで笑われると、ちと来るものがあるな……」
ララァ『ごめんなさい……っ』クスクス
シャア「お前のことだ。随分な王様を思い浮かべたことだろうな……全く」
ララァ『大佐』
シャア「ん?」
ララァ『大佐は王様になっても、私をお側に置いてくれますか?』
シャア「…………」
シャア「あぁ、勿論さ」
ララァ『それならば良いわ。王様でも、お殿様でも』
シャア「ちゃっかりしているな、ララァは」
シャア「だが、そうだな……くすぶる気持ちに任せて燃え上がるのも、一つの手か」
シャア「ありがとうララァ。おかげで踏ん切りが着きそうだ」
ララァ『どういたしまして』
ララァ『あ、大佐!』
シャア「ん?」
ララァ『あの約束、覚えていますか?』
ララァ『大佐、やっぱり私専用のザクレロが欲しいわ』
シャア「えっ」
・
・
・
シャア「…………」スッ
ピタッ
シャア「……紹介にあった通り、私は、キャスバル・レム・ダイクン」
シャア「シャア・アズナブルという仮の名を名乗り、今日まで生き長らえてきた男である」
シャア「だが私は、この名前に誇りを感じている」
ガルマ(シャア……)
セイラ(兄さん……)
シャア「シャア・アズナブルとしての一個人の生は、私に様々なことを教えてくれた」
シャア「それは誰もが知り得ること、一人のスペースノイドの等身大の生き方そのものであり、それが何より大切であることも知ることが出来た」
シャア「此処に立つ私は何のことはない。諸君等と変わらぬただ一人の男だということである」
シャア「回線を借りているのは皆知っての通りの連邦軍であるし」
シャア「此処ニューヤークは地球であり、今この放送を聞いている者達はスペースノイドもアースノイドもいるはずであります」
シャア「皆、不安に駆られている。何が正しいのか、何が正しくないのか、分からないのだから当然です」
シャア「だが、此処にいる者もこの放送を聞いている者も、皆知っているはずなのです」
シャア「宇宙に浮かんでいるばかりで、魂を重力に引かれ……」
シャア「手前勝手な思想で地球にコロニーを落とし、人々を抹殺すること」
シャア「地球に尻を乗せ、宇宙で一生懸命に命を紡ぐ者達を嘲笑い」
シャア「己の欲するままに税を搾り取り、地球を汚し尽くすこと」
シャア「そのどちらもが、明らかに間違っていて、今すぐにでも正さねばならないことであると!!」
シャア「肉親の愚を恥じ、自らが泥を被ろうと立ち上がることを決めた、我が友人ガルマの正義」
ガルマ「!」
シャア「もはや組織の母体が崩れながらも、ジオンと敵対し、先ほどまで殺し合っていたにも関わらず、自らの使命を果たさんと私に力を貸してくれた、地球連邦軍コジマ大隊の諸君等の正義!」
――――
カレン「だとさ」
コジマ「……イーサンよりはマシだと思っただけよ」
――――
シャア「そして今!過ちを正し、次の子等の為、次の次の子等の為!」
シャア「命を重んじ、正しいと信じる道を突き進もうとする諸君等の正義の為に立ち上がるのである!!」
ワァアアアアアア……!!
シャア「あまつさえ自らの国民と弟すら消そうとする、下劣な総帥を持つ国を、偉大なる父の名で呼ぶべきではない!!」
シャア「よって今!正しき想いを持つ者達の為に!!」
シャア「新たなるジオン!【ネオジオン】の建国を!ここに宣言するものである!!」
ワァアアアアアア……
ワァアアアアアア……
・
・
永井一郎「宇宙世紀0079が、終わりを告げた」
永井一郎「0080、ネオジオンの産声と共に始まった年は、荒廃した地球に余力を欠き混乱に陥ったジオンの、あまりに寒い始まりとなってしまった」
永井一郎「それでもガルマとシャアは、沸き立つ声と希望に向かう眼差しの中に」
永井一郎「確かに光を見出していたのだった」
『……いさ……』
『…………』
ナナイ「シャア大佐!!」
シャア「はっ!夢か!?」
ナナイ「しっかりなさってください大佐、これから地球連邦軍との会談なのですから」
シャア「あぁ……分かってる」ゴシゴシ
ナナイ「すごい顔をしていますよ……ほら目やに」ゴシゴシ
シャア「ん……」
ナナイ「さ、行きますよ」
シャア「あぁ」
バタンッ
ブロロロロ…………
シャア「……方向が違うようだが?」
ナナイ「いいえ、合っていますよ」
ナナイ「久し振りのズムシティなのですから、会いに行ってあげてください」バサッ
シャア「花……」
シャア「あぁそうか……もうそんな時期だな」
パサッ
シャア「……全く、散々人を焚きつけておいて、流行病でぽっくり逝きおって」
シャア「何が【今度は私が君を盛り立てる番だ】……だ。盛り立つ暇もなかったぞ」
シャア「…………」
シャア「今度な、アルテイシアとララァが久し振りにズムシティに来るんだ」
シャア「孤児の世話ばかりで、少しは私の世話もしてくれとぼやいたら、【あなたは相変わらず甘えん坊だ】と笑われた」
シャア「少しはイセリナ嬢を見習ってもらいたいものだよ、全く」
シャア「…………」
シャア「何とか言えよ。坊や」
【Garma Zabi】
【UC0058~UC0082】
マイ「此処にいらしたのですか、大佐」
シャア「マイか」
アムロ「俺もいるぞ、シャア」
シャア「アムロもか。どうした、一体?」
パサッ
パサッ
アムロ「墓参りに理由は要らない」
マイ「死者を悼む心だけがあればいいのです」
シャア「……そうだな」
ナナイ「シャア大佐、そろそろお時間です」
シャア「あぁ」
マイ「もう行ってしまわれるのですか?」
シャア「相も変わらず忙しくてな」
アムロ「木星圏開発の話か、なかなかこじれそうなネタだぞ」
シャア「何とか戦争だけは避けるようにしてみせるさ」
『シャア』
『何だ、ガルマ』
『私は永くない。分かるんだ、何となくだが』
『馬鹿を言う、お前にこんなに早く休まれては私の身が保たんよ』
『まあ聞け』
『頼みがあるんだ、とにかく、私が死んでからはそれを出来る限り実行してもらいたい』
『…………』
『嘘でも良い。分かったと言ってくれ』
『……いいだろう。話半分に聞いてやる』
『ありがとう、シャア』
『何だ、ガルマ』
『私はグフにケチをつけたな』
『あぁ』
『ギャンにもケチをつけた』
『あぁ』
『ビグザムのときは、ケチをつけながらも何となくやれてしまいそうでイライラした』
『あぁ、イライラしていたな』
『だがな、シャア。私が一番ケチをつけたかったのは、戦争そのものなんだよ』
『……あぁ、知ってたよ』
『18mの人型ロボットだろうが、3mの戦車だろうが、戦争そのもののバカバカしさに勝る者なんかありはしない』
『石ころだろうと、木の棒だろうと、素手ですら。戦争という行為が、一番愚かしい行為なんだ』
『だから、約束してくれ』
『どんな苦難があろうと、どれほど馬鹿にされようと、お前自ら戦争を仕掛けるようなことは、しないでくれ』
『ずっと、私が好きだったシャア・アズナブルでいてくれ』
『…………』
『おい、ガルマ』
『…………』
『ガルマ』
『…………』
『…………』
『…………』
『返事をしろよ。坊や』
『…………』
シャア「…………」
ナナイ「大佐、今回の件はそこまで危険視するようなことでも無いと思いますが」
シャア「人の感情は複雑だからな」
ナナイ「木星は承諾しますかね」
シャア「させるさ。下心を疑われるなら、それなりに考えるだけよ」
ナナイ「……相変わらずですね、シャア・アズナブル」
シャア「惚れ直したか?」
ナナイ「抱いてくださらない男に気を許すのは、もう止めにするつもりなのです」
シャア「ふふ、貞淑な夫も辛いものだ」
ナナイ「膝くらいなら貸しますが」
シャア「後で借りるとしよう」
シャア「何だ」
ナナイ「ガルマ様との約束、いつまで続けるおつもりなのですか?」
シャア「ナナイは戦争が好きか?」
ナナイ「まさか。何となく聞いてみただけですわ」
シャア「……そうだな」
シャア「少なくとも、私が死ぬまでは続けるつもりだ」
ナナイ「あなたが無くなったら?」
シャア「また死ぬ間際に誰かと約束しよう」
シャア「自分の子供でも、誰かの子供でも……そうやって約束を繋げていく」
ナナイ「…………」
シャア「いつまで続くかな?」
ナナイ「きっと、ずっと続いてくれますよ」
ナナイ「ん」
シャア「続くと……いいな……ずぅーっと……」
シャア「…………」
ナナイ「大佐……?」
シャア「…………」
ナナイ「大佐」
シャア「……ZZZ……」
ナナイ「……ふふっ」
ナナイ「おやすみなさい。大佐」
おしまい
マジで乙!
こんなに書けておもしろく、そして泣いたSS久しぶりだわ
ありがとう!
とてもよかった(小並感)
もっと見ていたかったぜ
本当にお疲れ様!
おやすみなさい
きっとギレンの野望も連邦の腐敗もこいつらならなんとかしてくれるさ
楽しませて頂きました。
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