の続きとなります
永井一郎「それは、ガルマ・ザビがMS開発の浪漫偏重時代に対し、戦いを挑んだことの通過点に過ぎなかった」
永井一郎「ガルマ・ザビ少将は各重力戦線の司令官に戦後処理を任せ、イセリナ・エッシェンバッハ改め、イセリナ・ザビとの新婚旅行に出掛けることにした」
永井一郎「そして、新婚旅行を終えて戻ってきたガルマ・ザビを待っていたのは」
永井一郎「新たなる戦いと、後にかけがえなき友となる者との出逢いであった」
・
・
・
シャア「やあガルマ・ザビ少将、新婚旅行はどうでしたかな?」
ガルマ「その話し方は止めてくれシャア、こそばゆい」
シャア「相変わらずからかいがいのある坊やで何よりだよ」
ガルマ「全く……私を坊や呼ばわり出来るのは、君と姉上くらいのものだな」
シャア「ははは、今や君はジオンの希望の星だからな」
ガルマ「その星の傍らには、必ず赤い彗星がいることを皆は知るべきさ」
シャア「くすぐったい言い方をする」
ガルマ「仕返しだよ。さぁ、仕事にかかるぞ」
ガルマ「この手紙と書類の量だからな……」
シャア「この執務室も随分広いものだと感じていたが、あっという間に資料室に様変わりだな」
ガルマ「相変わらず新しいMSの開発には私の目を通すようにと話をつけてあるからな、こうもなるさ」
シャア「イセリナ嬢には同情するよ」
ガルマ「お前も結婚相手を探すんだな。帰る場所があるというのはいいものだ」ピッ
シャア「……私に帰る場所など、ありはしないさ……」
ピッピッピッピッピッ
シャア「…………」
ピピピピピピピピピピピピピピピピ
シャア(そろそろ退避する頃合いだな)スッ
ガルマ「何だこのギャン配備の希望の多さは!!!!」バァンッ
シャア「そりゃあそうだガルマ、オデッサ大勝の立役者は君とギャンなn」
ガルマ「シャラップ!!」バシィッ
シャア「ぎゃんっ!!」
ガルマ「私が言っているのはそんな生易しい問題ではない!」
ガルマ「見ろこの手紙の数を!!」バッサァァ
シャア「ぐ……すごい数だな」
ガルマ「送り主は全員エースパイロットだ」
ガルマ「くそっ!アナベル・ガトーにジョニー・ライデン、シン・マツナガまで!」
ガルマ「あいつらゲルググの先行量産型を真っ先に配備してやるって約束したばかりだろうがッッ!!」ビリィッ
シャア「そ、そうか」
シャア(直接ギャンをねだればいいと考えて手紙を送らなくて正解だった……)
ガルマ「んん!?」
シャア「い、いやな……君が大活躍を果たしたのも、ギャンの類い希な白兵戦能力によるもの」
シャア「エースパイロットならば扱いづらいギャンも使いこなせるんじゃないかな……なぁんて」
ガルマ「…………」ゴゴゴゴゴ
シャア「……」ビクビク
ガルマ「……はぁ~……」ドサッ
ガルマ「いいかいシャア、少し長くなるがよく聞いてくれ」
シャア「あ、あぁ勿論だ」
ガルマ「だが、皆勘違いしていることも多いが、ゲルググと比較して【圧倒的に上】という訳ではないんだぞ」
シャア「それはそうだ、ゲルググは現在開発計画が進められている中でも桁違いのMSだからな」
ガルマ「あれこそ私が求めたMSだ……」
ガルマ「まあそれは置いておいて、だ」
ガルマ「私はグフに対し待ったをつけたが、グフ自体は全否定した訳じゃあない」
ガルマ「しかしギャンの場合はゲルググという完全な対抗馬がいるのだよ」
ガルマ「ギャンの使い勝手が良いというならば、ランバ・ラル少佐のG型ザク(グフ)のようにゲルググを近接特化型に改造すればいい。違うかね?」
シャア「むう……確かにゲルググは設計段階で仕様をバックパック交換だけで変えられようにしてあるからな」
ガルマ「第一……ッ」
ガルマ「私はあの盾が好かんッッ!!!」
シャア「それが本音だなガルマ」
シャア「作り手側から見ても実に情報が迷走している武装だからな……」ペラペラ
シャア「盾と武器の融合、新たな可能性」
ガルマ「穴だらけの盾と攻撃を防ぐ武器、そんな可能性捨ててしまえ!!」
シャア「実は盾の形した武器なんだ」
ガルマ「盾の形をした意味があるのか!?撃ち尽くしてから盾にするとか言うなよ、装備されてる武器は機雷だぞ機雷!そんなもんフィンガーバルカン以下だ!」
シャア「実は爆発により衝撃緩和し盾の役割が出来る」
ガルマ「攻撃する機雷やニードルミサイルでそれを為そうとするなぁぁぁッ!!」
シャア「あと、私からも言わせてもらえると、あの盾はやたら重かったな」
ガルマ「乗ったのか?」
シャア「君が乗ったものに試しにな」
シャア「盾としてはグフやザクのそれと比較して非常に分厚い割に、中の装備のせいで防御性能と取り回しに難がある」
シャア「いざ武器として考えても、機雷とニードルミサイルだからな……グフのバルカンよりは火力はあるが、なまじ動かしやすく機動力がある分、やはり差し込める程度には射撃戦がしたくなる」
ガルマ「実際あの場で活躍出来たのは性能だからな……ゲルググで戦っていても活躍は出来たろう」
シャア「使いやすいのは確かなんだがなぁ……確か宇宙では完全にゲルググ以下の性能になるのだったか」
ガルマ「地上限定運用も考えたがな……グフにダメ出しをしたくせにギャンを特別枠で生かすのは私のプライドが許さない」
シャア「…………」
ガルマ「なあシャア」
シャア「ん?」
ガルマ「ギャン、欲しいか?」
シャア「……難しいな。既存の機体からすれば遥かに強いMSだが、エースパイロットだけに配備するとなれば、兵站にも癖が出る」
ガルマ「前も話したよな。私は浪漫を否定するつもりはさらさらないんだ」
ガルマ「だが、エースパイロット専用MSはあくまで量産型MSのカスタマイズに留めるべきだとも考えている」
ガルマ「自分自身でそれを否定した今となっては、古い考え方なのかもしれんな……」
シャア「ガルマ…………」
永井一郎「一人の猛者が誕生しようとしていた」
「ゲルググのナギナタですが、両方から出るのは無駄ですから止めましょう」
技術者「そ、そんな!せっかく両立させた技術なのに!」
「第一柄の長さが中途半端なんです。これだとヒートホークやヒートサーベルの要領で下手をしたら自分にまで当たりますし、両方の刃を活用するのは一般的ではない」
「柄を長くしつつ片側だけから出すようにすれば、エネルギー消費は実質半減しリーチも延びますから、これからゲルググに乗るパイロットの安全性とも噛み合いますよ」
技術者「ぐう……」
アルベルト「中尉」
「! 少将」
アルベルト「君に辞令が下った」
アルベルト「地球に降りてもらうぞ」
「地球……ですか?」
シャア「技術本部から転属?」
ガルマ「うむ」
ガルマ「ハネムーン後の仕事の山を片付けるには一人では辛かろうと、姉上が派遣してくださったらしいのだ」
シャア「キシリア閣下がか」
ガルマ「だがなぁシャア、公国軍技術本部の人間は、それこそ浪漫の中に生きるような奴らばかりだからな」
シャア「絶対人生の内で一回は【こんなこともあろうかと】と呟いたことがありそうな人種だな」
ガルマ「うむ……」
コンコン
ガルマ「入りたまえ」
『失礼いたします』
ガチャ
マイ「ジオン公国軍技術本部技術試験課、オリヴァー・マイ技術中尉、本日ただいまを以てガルマ・ザビ少将指揮下に入ります!」ビシッ
シャア(何だか我々とデフォルメが違う者が来たな)
ガルマ「ガルマ・ザビだ。よろしく頼む」
マイ「あの赤い彗星、でありますか!」
マイ「お会いできて光栄であります。大佐のMS運用論は我々の間でも大変話題になったものであります」
シャア「せいぜいデブリを蹴るくらいのことを、運用論としていいかは疑問だがね」
ガルマ「ところでオリヴァー・マイ技術中尉」
マイ「マイで結構でございます、ガルマ様」
ガルマ「そうか、ならばマイ中尉、これを見てもらおう」
サッ
マイ「?」
ガルマ「ここに置かれたデータは、それぞれ既に開発されたMSだ」
ガルマ「左から【アッガイ】【ザクレロ】【ギャン】……」
ガルマ「これらのMSに対する君の屈託無い意見を聞きたい」
マイ「……これは、試験と捉えるべきでしょうか?」
ガルマ「君の判断に任せよう」
シャア(ギャンはともかく、ヒドいMSばかりだな)プッ
マイ「素晴らしいMSだと思います」
シャア「なに!?」
ガルマ「ほう……理由を述べてくれ」
マイ「まず、ざっと目を通した程度に過ぎませんが、強力な武装を数多く搭載しています」
マイ「特に頭部の【105mmバルカン砲】四門は、言うなれば単騎でザクが四機、ザクマシンガンを掃射するに匹敵する火力を生む計算になります」
マイ「他にもフレキシブル・ベロウズ・リム構造の腕部は二倍以上の長さに延びながら強度は片手で本体自重を軽く耐え抜く強度があり」
マイ「あぁやはり……この資料にも、洞窟や崖を易々登ることが出来る記述が有りました」
ガルマ「……続けたまえ」
しかも見た目もキュート
支援
マイ「排熱を抑える機構と電磁波吸収剤により高いステルス効果の持ち、前述の火力を易々敵陣中枢に運び込める機動力を助けています」
マイ「更に特筆すべき点として、ザクのパーツを流用していることから、コストを抑えつつ現地でもザクのパーツで修繕が可能という、他の水陸両用機には無い利点も見逃せません」
マイ「ザクのエンジンを二つ積み込んでいても片方だけ使えば長時間の隠密活動も可能……成る程、やはり素晴らしいMSです」
ガルマ「…………」
マイ「まず、ボディが非常に大きいので、視認による発見をされやすいという点」
マイ「それと流石に安価で頑丈だからといって高性能ではないので、ズゴッグなどの水陸両用機と完全に代われるほどの実力は無いこと」
マイ「ステルス効果のあるMSは他に例が無いので、運用した際の作戦運用はアッガイに合わせる必要があるということくらいでしょうか」
マイ「あとこれは改良点とも言えますが、現在進められている【統合整備計画】の一環にアッガイを盛り込み、頭部バルカン砲をMMPシリーズの小口径弾と共通規格にし、構造に余裕を持たせ携行弾数を増やすのは如何でしょうか」
シャア「…………」
ガルマ「…………」
マイ「……ええと、なにか……」
ガルマ「エクセレント……!」
マイ「それが私の仕事でありますから」
シャア(何を言ってるのかさっぱり解らん)
ガルマ「あと挙げるべき点は、水中では魚雷などの装備が無く、他の水陸両用機に比べ水中での攻撃力が不足している点くらいかな?」
マイ「あ……!」
ガルマ「なに、既に腕部武装のバリエーションに魚雷を追加して量産体制に入れてある。抜かりはないよ」
マイ「おぉ!」
ガルマ「では続けてくれ。次は【ザクレロ】だったな」
シャア「ははは、流石にこれは……すごい見た目だな」
マイ「ぷっ……それは、はい……」
シャア「設計した者の顔が見てみたいものだな」ハッハッハ
――――
キシリア「くしゅんっ」
――――
シャア「何……だと……?」
マイ「まず他のMA、私が知っている中ではビグロですね」
マイ「これと比較した場合、加速力や運動性能では大きく劣ってしまいます」
マイ「ですがこれはザクレロ自体の開発が問題により遅れに遅れたことから来る、【部品の旧式化】によるものでありますから」
マイ「現在の技術で再評価するべきはその戦法と構造であると考えられます」
ガルマ「成る程、性能はカタログスペックよりは上に出来ると」
マイ「例えばこのエンジンとスラスターならば概算でも……」ピピピ
マイ「こうなります」
ガルマ「ほう」
マイ「それに例えば、このスラスターならば」ピピピピピピ
ガルマ「成る程!」
マイ「そしてこればかりは空論ですが、これならば……」ギエピー
ガルマ「素晴らしい!」
シャア「ガルマ、先に進めてくれないか」
見た目も真面目に考えて威嚇効果もあるし
あのクローは意味不明だけど
マイ「我々から見たらこれは味方ですからかわいげもありますが、連邦軍から見たら【高速で接近し拡散メガ粒子砲を吐いてナタで切りつけてくる敵MA】なわけでありまして」
マイ「この様に形状で相手を威圧するのは、それを相手が理解できる状態であれば十分作用します」
ガルマ「姉上がそこまで理解していらしたかは分からんがな」
シャア「えっ」
マイ「えっ」
ガルマ「なんだ、知らなかったのか?」
ガルマ「構わん。続けたまえ」
マイ「は、はい……」
マイ「えー……ザクレロの特筆すべき点は、やはりその構造の単純さに有ります」
マイ「MA全般に言えることではありますが、単純ならばそれだけ生産性が増し、数を送り出せます」
マイ「MAの数を増やす必要があるかは、私個人としては疑問ではありますが、ザクレロの場合先ほどの概算でもそれなりの性能向上が伺えますので」
マイ「安価で強力な突撃機を増やせるというのは、やはり利点であると思います」
そう言われりゃ確かに怖い気がするな
マイ「ザクレロの場合開発時期が早かったため、口吻のメガ粒子砲が広範囲短射程の拡散式になっています」
マイ「これですと、攻撃するまでに必要な距離を自力で接近しなくてはならず」
マイ「スピードはあっても運動性の低いザクレロではそれが難しいと判断されるのではないかと」
シャア「近付くのはそんなに難儀かね?」
ガルマ「シャア、それは君達エースだけだよ……」
マイ「ヒートナタシステムは、通り過ぎながら斬りつけるという点、当てられたら確実に溶断出来る点がビグロに比べ優秀ですが」
マイ「ビグロですら射撃戦による敵機の破壊がまず挙げられますから、それを軸にしすぎるのはいささか難かと思われます」
マイ「むしろビグロのクローをヒートナタにするのも悪くはないかも知れませんね」
ガルマ「案ずるな、あれに掴まれて死なない奴はそうそういるまいよ」
マイ「確かに!ははははは」
シャア「ははは……はは」
マイ「現在の技術による性能向上、これは【統合整備計画】に回してみるのがよろしいかと」
マイ「それとミサイルランチャーも装備していますが、頭もデカいですから、他にMA用のバルカン砲などを内蔵するのも良いかも知れません」
マイ「それと口内の拡散メガ粒子砲も統合整備計画により改修して性能を上げるか」
マイ「いっそゲルググのビームライフルを何本か仕込むのも良いかも知れませんね」
シャア「MAの武装としても成り立つか、ゲルググのビームライフルは……」
ガルマ「白い奴の火力に遜色ないのだから当然だ」
マイ「ヒートナタシステムは、これは個人的な趣味もあるのですが」
マイ「せっかく腕と肩がありますから、フレキシブル・ベロウズ・リム構造にして、延ばせるようにしたらどうでしょう?」
シャア「ますますゲテモノ化が進むな」
キシリア『聞こえたぞ、シャア』
シャア「ひぃっ!?」
ガルマ「良いじゃないか、正しい浪漫の形だよ」
マイ「恐縮であります」
キシリア『ガルマ、ザクレロの話をしていると聞いて連絡した』
ガルマ「はい、姉上」
シャア(誰に聞いたんだ誰に……!)
キシリア『私の発案した【両腕をチェーンソーにして切り裂くザクレロ】は開発出来そうか』
ガルマ「技術的に難しいかと」
キシリア『そうか……(´・ω・`)』ショボン
マイ「では、ザクレロの評価を終了いたします」
ガルマ「では……」
シャア「……」ゴクリ
マイ「【ギャン】の評価に移りたいと思います」
ガチャッ
マ「待て、それは元々私の為に開発していただいた……」
ガルマ「ウラガン」
ウラガン「済みません。すぐに退かします」
ガチャッ
ガルマ「続けたまえ」
マイ「は……まず、その性能はゲルググとのコンペティションに参加するほどであり」
マイ「現行の機体を凌駕する非常に高い性能を誇り、特にコンセプトでもある白兵戦能力に関しては」
マイ「流体パルスアクセラレーターと全体的な関節の駆動範囲などを重点的に調整しており」
マイ「ゲルググ以上とも言える性能を」
ガルマ「マイ中尉」
ガルマ「私が聞きたいのはそこではないのだ」
マイ「はっ……」
ガルマ「ギャンはこれからのジオンに必要か」
ガルマ「必要無いか、だ」
マイ「…………」
シャア「ガルマ……」
ガルマ「なに……?」
マイ「ですが、私がするのはあくまで評価であり、それが必要か不必要かを語るのは別の誰かであると私は考えます」
ガルマ「…………」
マイ「ガルマ様も、グフに対し問題点を指摘しただけでなく、グフの能力を評価し、提案し、G型ザクを開発なされました」
マイ「G型ザクが現場の兵士から【グフ】と呼ばれ親しまれているのは、ガルマ様ご自身のグフへの想いを、兵士達が理解しているからだと私は確信しております」
ガルマ「マイ中尉……」
シャア(評価はボッロクソだったけどなぁ)
マイ「……評価を続けます。その結果、このギャンをどうなさるかはガルマ様に一任します」
ガルマ「……続けてくれ」
マイ「はい」
マイ「弱い点は、それ以外がからきしであることですね」
マイ「これはグフの時とは違い、ギャンの白兵戦能力に近くその他の性能をほぼ全て上回るゲルググの存在によるものです」
マイ「ゲルググはもはや評価し尽くされておりますから割愛しますが」
マイ「ギャンがゲルググの代わりを担うことは不可能であることには変わりません」
ガルマ「……」
マイ「ですが、ジオン公国軍技術本部にも、ギャンの話は届いておりますから」
マイ「そうですなぁ、ならばもう私の趣味でギャンのプランを模索するといたしますか!」
ガルマ「えっ」
シャア「えっ」
マイ「これはそもそもバーニア数や機動力の問題点でありますから、全面的に強化いたします」
マイ「元々ギャンの格闘能力の高さは、その関節の強さと広さ、流体パルスアクセラレーターによる動きのたまものですから」
マイ「はっきり言って扱いにくくなりますね、これ」
シャア「おい」
マイ「そこで、機動力の増加をそのまま格闘能力の強化に回せるよう」ピピピ
マイ「こう!!」ビーッ
ガルマ「うわ……」
マイ「ビームサーベルの柄を思い切り延ばして、槍にします」
マイ「言うなれば騎士が自分で騎馬の速度を出して突っ込む感じです」
シャア「シュールな例えだが、確かにそれならばスピードの強化がそのまま格闘能力の向上に繋がるな」
ガチャッ
ニムバス「騎士と聞いて!」
ウラガン「すみません。すぐに退かします」バタンッ
マイ「一度捨てます」ポイッ
シャア「やはり駄目か?」
マイ「盾と武器の複合という理念は素晴らしいのですが、如何せん信頼性や汎用性などが置き去りになっていますからね」
マイ「このギャンはスピードが命なので、盾の形状はそのままに【盾の機能に特化したもの】を採用します」
シャア「うむ、ラル少佐は結構気に入っていたのだがな」
マイ「ならば此処で一つ、【現在可能な盾と武器の融合】の選択肢を探すことにします」
ガルマ「選択肢?」
マイ「統合整備計画には、こんなものが提案されているんですよ……」
ヴンッ
ガルマ「これは……!」
マイ「75mmガトリング砲を装着した大型シールド」
マイ「通称【ガトリングシールド】です」
熱いな!
シャア「うぅむ、なかなか異色な組み合わせだ」
マイ「他には、ジオン公国軍技術本部のアルベルト少将の考案で」
ガルマ「何をやっているんだアルベルト……」
マイ「ギャンの素体シールドにドムの拡散ビーム砲を搭載し、エネルギーCAPと出力調整で目潰しとビーム兵器を使い分ける、という案もあります」
シャア「これは私も好きだな」
マイ「他にも、敵のジムのビームスプレーガンを真似た低出力ビームを仕込んだり、陸戦仕様のゲルググのシールドも活用したり」
マイ「いっそ盾を持たず二刀流に……」
ガルマ「…………」ジロリ
マイ「……というのは冗談で、色々な方法を考案出来ると考えます……ははは」
マイ「もちろん、これらは全てゲルググでも活用出来ます」
マイ「ですが、人々がギャンを求め、ゲルググと並んで戦える仕組みさえ作ることが出来たなら」
マイ「その圧倒的な白兵戦能力を用い、戦場で活躍できることは想像に難くありません」
ガルマ「うむ……」
マイ「それに、正直エースが乗ればゲルググもギャンも強いですからね」ハハハ
シャア「貴殿は私達を便利道具か何かと勘違いしちゃいないか……?」
ガルマ「……マイ中尉」
マイ「はい」
ガルマ「最終評価を頼む」
マイ「……はい」
・
・
・
永井一郎「ギャンとゲルググの性能比較は、ジオンのパイロット全員に通達された」
永井一郎「ガルマが駆ったからだけでなく、真に比較し、欲するならば」
永井一郎「ギャンを少数生産し、他のMSの武装とも兼用可能として届けると、ガルマ少将自ら説明をした」
永井一郎「その結果、ゲルググを欲する者が大半を占める中」
永井一郎「黒い三連星のオルテガ、青い巨星ランバ・ラル、白狼シン・マツナガなど」
永井一郎「少数のエースが自らの適性を鑑みてギャンを選択し、受領することが確定したのだった」
見てみたいな
ギレンの野望で出てくるよ
コーウェン「次の報告を聞こう」
兵士「はっ」
兵士「ジオン軍の新型MS、情報によれば【アッガイ】というMSの交戦記録が届けられています」
コーウェン「ジオンめ、また新型を作りおったか……!」
兵士「交戦した兵士達によると」
・なんかデカい頭が見えたかと思ったら一瞬で蜂の巣にされた
・ヨチヨチ歩いてると思って馬鹿にしてたら腕がすごい伸びた
・洞窟の中で追いかけたら猿みたいに飛び跳ねて逃げられた
・部隊内の男女関係にやきもきしてたらいきなり頭を叩き潰された
・土下座をするような姿勢をしたら危険。頭部のバルカン砲を一斉掃射する予備動作のようなもの
・やたらいっぱいいる
・かわいい
コーウェン「…………」
兵士「破壊した残骸を調べたところ、頭部に四門の105mmバルカン砲を搭載しているとのことです」
コーウェン「四門だと!?我が軍の携行マシンガンが100mm、つまりこのMSは、我が軍の装備以上のマシンガンを4丁構えているようなものだぞ!」
兵士「はっ、現場の兵士達は【褐色の魔物】と呼んでズゴック以上に恐れているとのことです」
コーウェン「ジオン驚異のメカニズムか……恐れ入る」
兵士「それと、ルナツーで【火を噴く巨大な生首】の存在が確認されて、兵士がノイローゼを発症しているとか」
コーウェン「また新型か……くそっ」
永井一郎「この隙にとジオンは【統合整備計画】を推進、武器弾薬やMSの操縦規格を一新し統一化」
永井一郎「国内にあった混乱を収めることに力を入れるのであった」
永井一郎「ジャブローの地下ではジムの製造が急ピッチで進められていたが、オデッサの敗戦により物資供給は滞り萎縮し」
永井一郎「彼等の足元を掬うには、まだしばらくの時間が必要となるのだった」
永井一郎「しかしガルマは思い知る」
永井一郎「自らの最大の敵は、内側にいるのだということを」
シャア「やあ中尉」
マイ「シャア大佐、おはようございます」
シャア「またガルマの代わりにMSのデータとにらめっこか?」
マイ「それが私の仕事でありますので」
ガチャッ
ガルマ「だから、それは出来ぬと再三申したではありませんか!」
マイ「!」
シャア「!」
ギレン『出来ぬはずはない。我々は一度コロニーで地球を灼いているのだぞ』
ギレン『やかましく我らの管理に異を唱えるならば、全て焼き払え。これはジオン公国総帥としての命令だ、ガルマ少将』
ガルマ「……っ」
マイ「ギレン総帥……!?」
シャア(ほう……?)
ガルマ「こっ……」
マイ「これは……!!」
シャア「うっわ……」
ギレン『そう、これこそ私自らが立案した、ジオン公国軍決戦兵器』
ギレン『ビ グ ザ ム だ』
ガルマ「 」
マイ「 」
シャア「ないわー」
ガルマ「 」
マイ「 」
シャア「確かに恐ろしいな、これは」
ギレン『さあガルマ、感動の余韻に浸る暇など無いぞ』
ギレン『速やかにこのビグザムを
量
産
体
制
に入れ、我がジオン公国軍の勝利を掴み取るのだ』
ガルマ「 」
マイ「ガフッ、ガハァッ」ボタボタ
シャア「吐血っ!?」
ガルマ「くそっ、やられた!!」バァンッ
シャア「いやーザビ家は君以外順当に地雷思考だったが、まさか長兄が最大規模のツァーリ・ボンバだったとはな」
マイ「ビグザム……破格の性能と製造費用がまず目を引くMA」
マイ「地上ではその巨体をミノフスキークラフトで支え、Iフィールドジェネレータでビーム兵器を一切無力化」
マイ「その全方位メガ粒子砲と正面の大出力メガ粒子砲で全てを粉砕するコンセプト……ですが……」
シャア「実際量産したらどうなる?」
マイ「ビグザムそのものを量産しようものなら、オデッサの勝利のプラス分が丸々すっ飛びつつ公国の財布の底に穴が空きますね」
シャア「なんだ、ガルマの頑張りの一切が無碍になるだけか」ボリボリ
マイ「ついでに我々のこの一年近くが丸々無碍になります」
おいもう大和田秀樹のシャアでしか再生されないぞ
シャア「量産したからといって勝てる訳じゃない、ということか」
マイ「まあ量産型ビグザムをわざわざ開発して作るくらいなら、ゲルググを同じ費用で作る方が遥かに優先ですね」
マイ「というかこれは……ジャブロー攻略の要になるよう開発されたとありますが」
マイ「量産型ビグザムでも、統合整備計画の予算を丸々毟る可能性が出てきてしまいますね」
シャア「待て待て待て、今の我々は統合整備計画による足場固めをしている最中なのだぞ」
シャア「統合整備計画を中断しようものなら、そのしわ寄せを誰が対処するというのだ!?ギャンの少数生産ですら、計画ありきなのだぞ!!」
マイ「何も言えません……」
ガルマ「…………」
マイ「えっ」
シャア「ガルマ」
ガルマ「我々に出来ることは、このビグザムを評価し、研究し、提起することだ」
ガルマ「その上で兄上に対し意見を出そう。まずは、我々の出来ることをするまでだ」
マイ「ガルマ様……」
シャア「…………」
シャア「ふっ、いつかのかんしゃく持ちも良い目をするようになった」
ガルマ「今の私は自分だけの命を背負っているわけではないからな……」
ガルマ「ふー……時間がない。始めよう」
マイ「はい!」
シャア「やれやれ、忙しくなるな」
永井一郎「エンジェル伝説の主人公みたいな顔しやがってとか思いながらも、三人はビグザムのデータを出し、シミュレートし、吟味し、整理した」
永井一郎「そして導き出された答えは」
永井一郎「驚くべき内容であった……」
ガルマ「無駄無駄無駄」
ガルマ「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァァァァァァ!!」ガシャァァァァン
ギニアス「ひぃぃっ」
ガルマ「何なんだこのギャンのシールドミサイルをMA転向しました(>ω・)vキャピみたいなMAは!!!」
ガルマ「全方位メガ粒子砲ってお前、味方いたら巻き込まれんじゃねえか!!」
ガルマ「しかも全方位にそんなもんあったら、他の装甲がガチガチでも全身に28箇所のもろい場所がありますなんて言ってるようなもんだろうが!?」
ガルマ「し・か・も対空ミサイルが脚にあるって何だおらぁぁぁぁぁ!!!」ズゴァァァ
ガルマ「しかも六発しかねえって、空から攻めてくんのは想定六機か、あぁぁ?!」
ガルマ「しかもメガ粒子砲にミノフスキークラフトにIフィールドジェネレータに……どんだけだ!!あっつうまにエネルギー使い切るわボケェ!!!」
ガルマ「動きがとろいわ射程が長いわ武装がいちいち噛み合ってないわもう……」
ガチャッ
マイ「あ、番ありがとうございます」
シャア「ただいま」シーハシーハ
マイ「基本的に主砲をメインに据えた拠点防衛用の機体、というイメージですね」
シャア「単騎で戦局の楔となる、まさにMAの理想形だな」
シャア「だがとにかく武装がちぐはぐだ」
シャア「使い分ければいいと言えば聞こえは良いが、言ってしまえばどの射程でも使える武器が限られるともいえるからな」
マイ「まるで【敗戦確定の戦場で突撃し、撃てば当たるような状況下でひたすらビームをばらまき、勝利を確信し油断した相手に一矢報いる】ためのMAですね」
シャア「何だかひどく限定的な聞こえだが、だいたい合ってそうな気がするから困るな」
ガルマ「で、一番腹立たしいのが」
マイ「それでも意外にジャブロー攻略戦に出したらやれちゃいそうなのが腹立つんですよね」
ガルマ「かといって量産型を作ろうにも、このビグザムだからこそ賄えるのであってそんなもん役に立つわけがない」
マイ「単騎及び少数のみの投入でジャブローを攻略し、後は拠点防衛用に作り替えるのが最適でしょうか」
ガルマ「これはいわゆる【初見だと滅茶苦茶強いが攻略法を知ったら余裕】の典型例だからな」
マイ「砲弾を正面砲口に叩き込まれたらお陀仏ですからね……」
シャア「火力は本当に素晴らしいんだがなぁ」
ガルマ「しかし冷却システム、これ宇宙だと駄目なんじゃないか」
マイ「計算上活動限界が早く来てしまうようですね」
シャア「具体的には」
マイ「三十分はまず保たないかと」
ガルマ「置物確定じゃないか」
ガルマ「机上の空論ならば成功しそうだがな、何だか実行したところで絶対に成功する気がしない」
ガルマ「第一な……このビグザムは私の地上制圧戦略からはかけ離れているんだ」
マイ「と、言いますと?」
シャア「ガルマはイセリナ嬢と結婚し、スペースノイドとアースノイドで和平を結べる可能性を見せたからな」
シャア「もうコロニー落としのような手法は使わず、宇宙移民独立の達成と平行し地球からの移民拡大を目論んでいるのだよ」
マイ「壮大な計画ですね……もうこの闘いの先を見据えていらっしゃるとは」
ガルマ「父の受け売り……いや、父が求めたジオン・ズム・ダイクンの理想だよ」
ガルマ「私が自ら立てられる理想ではない」
シャア「……話を続けようか」
マイ「どうしましょうか……総帥のMAともなると、我々の趣味で作り替えてしまう訳にもいきませんからね」
ガルマ「…………」
偉人の伝記でも読んでる気分だ
マイ「え?」
ガルマ「どういうことだ、シャア」
シャア「何故ギレン総帥がこんな話を切り出したのか、理由を考えていたのだ」
シャア「それがもし【焦り】に起因することならば、打つ手はある」
ガルマ「……謀るのか、シャア?」
シャア「しばし休みをもらうぞガルマ。ビグザムはお前達の趣味で改造してしまえばいい」バサッ
シャア「なに、私もこんな不格好な頭でっかちが地面を闊歩するのは趣味に合わん。圧制には相応のやり方で応えさせてもらうとしよう」ニヤリ
永井一郎「ジオン公国の本拠地、サイド3では、ギレン総帥を讃える声で沸き立っていた」
永井一郎「しかし、当のギレン・ザビはその理由を知らぬまま、困惑するばかりであった」
ギレン「父上、これはどういうことでありますか」
デギン「何のことだ、ギレンよ」
デギン「国民はお前が提唱したMAの開発が始まったと喜んでおるのではないのか」
ギレン「私が提唱した……?」
デギン「ガルマもお前に案を出され、大賛成して開発に手を貸していると聞くが」
ギレン「……言っている意味が分かりません。私は確かにガルマにMAの開発指揮を命じましたが、それは地上制圧用のMAです」
ギレン「何故、【制宙権防衛用大型MA】の開発が始まっているのです!!」
デギン「…………」ニヤリ
ギレン「!」
デギン「キシリアか、どうした」
キシリア「兄上が開発に着手したMAを共に吟味いたそうと、わざわざデータを持ち込んできましたのに」
ギレン「なに……!?」
デギン「ほう、それはいい。共に見ようではないか」
デギン「なぁ、ギレンよ」
キシリア「ホホホホ……」
ギレン「ッ…………!」
キシリア「では、これを」カシャンッ
ヴンッ
ギレン「何だ……これは……?!」
――――
ララァ「大佐、これが例のMA?」
シャア「あぁそうだ。名前を【ビグ・ラング】と言う」
ララァ「まあ、まるで着物を着ているみたい」
シャア「そうだろう。この着物の部分にビグザムの冷却システムを搭載し、宇宙空間での活動時間を飛躍的に拡大させることに成功しているのさ」
シャア「他にもビグザムの全方位メガ粒子砲を排除し、代わりに胴体上部に可動式の外付け120mmガトリング砲を六門、対空用に装着している」
ララァ「この着物の中には何があるの?」
シャア「MS用の武装や弾薬、それとビグザムの冷却システムにジェネレータだ」
シャア「他にもビーム攪乱幕を撃ち出すロケットがあり、機体そのものはIフィールドジェネレータで守られている」
シャア「もっとも、元々胴体のMAが開発中止になった理由である【真下の死角】に関しては、胴体にサブ・アームを付けて盾で防ぐという情けなさだが」
シャア「他にも大量の武装で敵を寄せ付けぬ戦い方をする、防衛用MAだ」
シャア「このMSはザクやリックムの拠点として機能する。ララァも助けてもらえるかも知れんぞ」
ララァ「大佐は助けてくださらないのですか?」
シャア「いい子にしていたら助けてあげるさ」
ギレン「ガルマ、貴様何のつもりだ!」
ガルマ『お気に召さなかったのですか?兄上』
ガルマ『あれこそ完璧にはほど遠いものの、ビグザムの一つの形といえるMAです』
ギレン「怖じ気付いたかガルマ……今更なのだぞ」
ガルマ『怯えているのは貴方だ兄上』
ギレン「何を!」
ガルマ『今後地球方面への戦略は私自らが考えて動きます』
ガルマ『ジオン公国のことを思うならば、国の安寧に尽くしていただければそれでよろしいかと』
ギレン「ぐっ……ぬうう……」
――――
シャア「今頃ガルマは、内心ビビりまくりながらギレンに啖呵を切っている頃か」
ララァ「でも、大佐がそう仕向けたのでしょう?」
シャア「勿論だ。ギレンにはしばらく黙っていてもらわねば困る」
シャア「だが……あのギレンがいつまでも黙っているなんてことは有り得んのだよ」ニヤッ
シャア「それに対しガルマは、適当にあしらう形で、応えるように私は命じたのさ」
ララァ「そうしたらギレンとガルマの関係は悪くなってしまうわ」
シャア「ガルマには、ギレンも頭を冷やしてくれると伝えたがな」
シャア「消えることのない確執はいずれ暴走を生む……ザビ家の内部分裂という構図をな」
ララァ「そうしたら、いずれはあなたが宇宙に立つのですか?」
シャア「そのときが来るかは分からんさ。少なくとも、ザビ家の妄執に宇宙の民を付き合わせる心配はなくなる」
ララァ「そのときガルマをあなたはどうするの?シャア・アズナブル」
シャア「……そのときになるまでは、考えんことにしているよ」
永井一郎「ビグザム無しでジャブロー攻略の糸口は掴めるのか、大敗の傷を癒やした連邦軍の反撃は?」
永井一郎「河は血の色に染まり大地は骨に埋まる、ジャブローの大激戦の行く末とは」
永井一郎「次回機動戦士ギニアス【忘れられたアプサラス】」
永井一郎「君は生き残ることが出来るか」
ヅダ「……」ドキドキ
永井一郎「君は無理だ」
ヅダ「(´・ω・`)」
おしまい
ヅダェ・・・
ヅダに未来はないのか
次も楽しみにしてる
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